2.初めまして

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2.初めまして

特力クラスに向かう途中歩きながら鼻歌を歌っていると見覚えのある背中を見つけた。 「————あれ?なっちゃん?」 思わず声をかけるとまたお前かといった表情をされた。 (まぁ慣れてますけどねぇ....) 相変わらずな対応にホロリと涙を流しつつ近づく。 「なっちゃんも移動中?」 「——その名前で呼ぶな。」 心から嫌そうな表情を浮かべる棗にめげずに話しかける。 「そういえば君のクラスだったよね?  新しく入ってきた女の子。  特力クラスらしくってこれから歓迎会の  準備するんだ〜」 隣に並びつつ当たり障りない話をする。 朝教師に聞かされた話には驚いたものだ。 まさかこの学園に自分から入りたいと来る子供がいるとは思わなかった。 (まぁ.....こんなとこって知ってたら入らないよねぇ。無知って怖.....) するとずっと黙っていた棗が口を開いた。 「あいつもうとっくにクラス行ったぞ。」 「え!?あっ!?うわまずい!!  ごめんなっちゃん、また後でね!!!」 そう言い切るとともにダッシュでクラスに向かう。 残された棗は呆れたようなため息とともに見送った。 「みんなごめん!!!遅くなった!!!」 バーンっと勢いよくドアを開けるとそこには和気藹々とジュースにお菓子にで乾杯してる中・初等部の子供たち。 「鎖南ちゃん先輩!!久しぶりー!」 「おっせー!」 「どこ寄り道してたんだよ〜」 たくさんのブーイングに謝りながら美咲のくれたジュースを受け取る。 「ごめんごめん、  時間勘違いしちゃっててさ〜」 「まぁそんなことより!ホレ蜜柑!  この人が我らが特力副代表の 鎖南ちゃん先輩だ!!」 翼に抱えられて出てきたのはツインテールの可愛らしい女の子。 おずおずと自己紹介を始める。 「あっ...う、うち、佐倉蜜柑って言います!」 「初めましてー蜜柑ちゃん!  私は、高等部A組倉田鎖南です。  一応特力クラスの副代表やらせてもらって  ます。よろしくね。」 ニコッと笑うと釣られたのか照れ臭そうになかった笑う蜜柑。 (かっ...かわい〜!) 「そんでな!その後翼先輩が“影操り”っていうのであの人らこかしてな!」 「へぇ〜!やるじゃんツバちゃん!」 「鎖南ちゃん先輩......絞まってる......!」 あれからすっかり打ち解けた2人は談笑していた。ちなみに翼は鎖南に肩を組まる→首を絞められるの状態で白目を剥いていた。 「鎖南ちゃん翼白目剥いてるよ〜」 「あっごめんツバちゃんやりすぎたぁ」 慌てて手を離しながら翼の頭をよしよしと撫でる。拗ねたように口を尖らせてた翼も満足げだ。 その様子を見てた蜜柑が羨ましそうに呟いた。 「なんか......鎖南ちゃん先輩って翼先輩のお姉ちゃんみたいやなぁ。うち一人っ子やし羨ましい.....」 「鎖南ちゃん先輩は特力クラスのお姉ちゃん的存在なんだよ。蜜柑もいっぱい甘やかしてもらえ〜」 美咲が翼を蹴り、鎖南の手を自分の頭に乗せながら言った。 交代で来た美咲も同じようによしよしと撫でてやる。 「ここではみんな家族みたいなもんだからね。特に特力クラスは他クラスに比べて少人数ってのも相まって人一倍仲間意識が高いんだよ。 蜜柑ちゃんも今日から私たちの家族。」 蜜柑の頭も空いた手で撫でてやりながら言うと、照れ臭そうに笑う。 「何か困ったことがあったら私達上級生を頼ってね。私はあんまり学園にいない時もあるけど呼んでくれたらすぐに駆けつけるよ。」 「先輩はアイドル活動もしてるから学園の外でも活動してんだよ。」 蹴られた翼がもそもそと戻ってきながら何も知らない蜜柑に教えてやる。 「ひゃあ〜!あいどるぅ!?なんてグループでしてはるんですか!?」 興味津々と言った様子で見上げてくる。 「や〜あんま大したことないよ...  あっでもアリス祭の時にたぶんライブするしぜひ見にきてね、蜜柑ちゃん!」 「アリス祭って???」 (あっそうか...来たばっかりだもんな、知らないよね) 「アリス祭っていうのは〜....」 「さなぁ!おっそい!練習行くよ!!」 突然現れた声に説明を遮られる。 テレポート(瞬間移動)で現れたのは楓。 「げっ...楓。」 「えっ!?だれ!?突然現れた!?」 初めて間近で見るテレポートに興奮気味な蜜柑をなだめる。 「この子は私のグループ仲間の四ノ宮楓。  テレポートのアリスなの。」 「あっこの子か、特力の星なしちゃんは!」 悪気はない(であろう)楓の言葉がトストスッと音を立てて蜜柑に刺さる。 けらけらと笑う楓を横目で見ながらため息をつく。 (まったく...大人がないんだから) 「こら、楓。蜜柑ちゃん気にしないで。  言い方ストレートなだけで悪気はないの。」 「そーそー!気にしないで!  あたしも元・星なしだし!」 蜜柑の頭を撫でながらあっけらかんと笑う。 そんな楓を茫然と見つめる蜜柑。 「まっ、あたしはバカにした奴らは縄で縛ってまとめて屋上で強制的に紐なしバンジージャンプさせて地面ギリギリでテレポートしてってな感じであらゆる手段で精神的に追い詰め回したけどね!」 「いいか〜蜜柑、この人にだけは逆らうなよ...  元ヤンだからな」 余計な入れ知恵をした翼を目敏く見つけて捕まえ、眉間をグリグリ。 「ん〜〜〜?なになに?翼ちゃんどちたの?  かまって欲しいのかな??」 「ギャーーー!!すんません!  お茶目なジョークっす!ジョーク!」 (もーほんと大人気ないんだから...) 「先輩助けてくださいぃぃ!!!!!!!」 半泣きの後輩を見ながらやれやれと立ち上がる。翼をいじめまくる楓の手をほどきながらデコピンをお見舞いする。 「さっ、後輩いじりはここまでにしてそろそろ行こ。唄喜も待ってるだろうし。 蜜柑ちゃんまたね、皆も。」 最後に翼の頭を撫でて、部屋を出た。
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