3,本能の目覚め②

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3,本能の目覚め②

「この部屋は三宅先生たちが帰るまで中原が退屈だろうから、どこかで待ってて」 その言葉が嬉しくて、結は言われた通り放課後を倉木のために暇を潰すのに使った。但し焼肉店のバイトが入っている日は遅くなるので会えない。そんな日は今まで通り放課後準備室を訪ね、他の先生たちに見つからないようにこっそり指に触れてから帰った。 そうじゃない日は一度家に帰ってからメイクを直して綺麗にしてから外出しておき、誰にも会わないように暇を潰して連絡を待つ。たった一人の親に会うのが面倒だったからだ。すると、大抵の日は18時には連絡が来て、倉木の車が近くに停まり、乗り込むと行き先も決めずに遠くまでドライブに出た。そして、そのまま知らない街のホテルに寄った。 初めてそうした日、結にとって倉木が初めての人だと伝えようとして、横たわったベッドでまだスーツの倉木を見上げた。倉木は全部を理解したような顔で、嫌ならやめると言った。嫌なわけない。そうして欲しくて近付いたのに…。大きく首を横に振った結が引き寄せてキスをすると、倉木もすぐにそれに応えた。 「せんせ……」 「目を見て。急がないから。 ゆっくりでいいよ」 痛みを感じたら止まって、体を優しく撫でてくれた。何度も甘いキスを繰り返し、蕩けるような愛撫で訳の分からない感覚を引き出され、自然と声が出た。何度もそうして、何度もくっ付いて、そのうち、倉木を受け入れられた。 「ぁ、、」 気持ちいいの感覚。なんだか分かった気がした。キスよりもっと直接的で、痛みの衝撃より快楽を探すことに必死になった。倉木が動くのが苦痛だったはずが、その動きが何度も摩る場所を見つけて、喘ぐのを抑えきれない。 「気持ちいい…」 「かわいいよ。俺も気持ちいい」 嬉しくて、満たされる。可愛がられたい。特別に見られたい。もっと繋がりたい。 今も、どんな男と寝ても溢れるこの感情は、たぶんこの日が最初。
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