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1,溺れる花④
クズ男というのは多種多様、そもそもそれにハマった女にとってはそれがクズ男であり、定義は難しく様々であるが、うちのクズはわがままで自由奔放で自己中心的で、いっそ嫌いになれたら楽なのにと思わせつつ、むしろ好きにさせる要素を持ち、女の真意を知っていて適度に雑に扱ったり驚くほど優しくしたり出来る上に、公私共に人を扱うことに長けていて仕事が出来る、私のような女がハマりやすい条件の整ったクズ男、と言える。
あの日キスをして付き合うことになって、少なからず舞い上がった結はメールしたくて堪らない。用もないのに用を作ろうとしたり、毎日ソワソワして裕一のことばかりを考えるようになった。しかし、裕一の反応は時を空けず冷淡になった。理由など分からぬまま淡白な対応の日々が続いた。
[付き合うって、何?]
結からのメールに、苦笑して返す裕一。結はモヤモヤとした思いが募るが、それを伝えられない。期待させられて、何も与えられず待たされる。容姿も平凡で決して方々からモテるタイプの女性では無かったが、付き合う男からは何もしなくても甘やかされるような恋愛をしてきた結にとって、放置することはあっても放置されることなど初めてで現実がよく理解できなかった。
裕一は勤務で会っても素っ気なく、事務所で束の間一緒に過ごしても退屈そうで、楽しげにしているのは結だけ。裕一が何を考えているのか全く理解できなかった。
だんだん疲れてきて、無かったことにしたくなる。あの日をそのまま否定したら楽になれる気がする。
もうやめよう。
そう思って期待するのをやめると、案の定家族に優しくなれた。裕一のことなどどうでもいいと思うように努めた。ただキスがしたかっただけなんだと思い込むようにして、それなら都合がいいじゃないかと自分を納得させた。再発した悪い病も今ならまだ間に合うんじゃないだろうか。こんな私でも許されるんじゃないだろうかと。
そんなある日、事務所で作業をしていた裕一のそばで仕事を進めていると、何故か上機嫌の裕一が話しかけてきた。今日は機嫌がいいと察し、結も冗談を言って二人で笑った。
「で、今日何色?」
「は!?」
会話の中で何度もセクハラ紛いの発言をしてくる裕一に若干嫌悪を覚えあしらっているとその態度に拗ねた裕一が不機嫌を醸した。
「なんで聞いちゃダメなんだよ」
「冷たいからです」
「冷たくないよ」
「うそつき」
「嘘じゃない嘘じゃない」
「じゃ、なんで構ってくれないんですか?」
「焦らしプレイ」
「そういうのいいです」
「俺変わってるって言っただろ?」
それ、ここで効いてくるのか、と結は頭を抱えた。
隣を見つめると、作業をしながら普段と変わらぬ顔色でいる裕一にヤキモキしていた自分が滑稽に思える。
「ねぇ…
なんで私?」
いろいろをすっ飛ばして聞いた。何故自分なのか。なんとなく他にも女がいそうなこの人が何故自分を口説いたのか。その真意が知りたかった。
「さぁ、な」
そう言うと裕一がスキニーパンツの上から体を触るのを結は拒否しなかった。脚から上がってくる手にソワソワして、付け根に辿り着くのを待っている自分に引く。
「おはようございます」
そのとき、交代のバイトの女の子が入ってきて、驚いて離れようとするのを裕一が止めた。
「おはよう」
裕一に倣って同じように言って振り返ると、バイトは会釈して更衣室に入っていった。椅子に座り机に向かっている二人。それも距離がある場所にいた彼女にはどうやら何も見えてなかったらしい。ホッとすると同時に意識してしまう。裕一の手はすでに結の足の付け根、その中心に辿り着いていた。裕一が反対の手で椅子を寄せる。そして中心に立てた指を上から下、縦にズッとスライドされ、結は咄嗟にその手を掴んだ。裕一は間髪入れずに下から上へ、今度は爪を立てて弾く。思わず腰が浮きそうになるのを堪え、イヤイヤと首を振ると、興奮した裕一が結の首に左手を回し引き寄せキスをした。
「ん…」
待って、これ好き…
裕一の指はその間何度も往復する。明らか反応した場所が湿り出した。裕一は五本指の爪を立てて荒々しく虐めてくる。結はもう熱って拒否も出来ない。その様子に満足すると裕一がそっと体を離した。
その直後更衣室からバイトが出てきて、裕一と軽く談笑しにきた。結はその時間を平然と過ごすことに必死になる。少しでも力むと膨れた突起がぴくんと反応を返して気持ちよくなってしまう。だがそれが堪らなくて隠れて何度も力み、溢れる蜜を感じた。まるで自慰行為のように。
彼女が店内へ出て行き、それを確認すると、結は泣きそうな目で裕一を見上げた。
「ハハッ、なんて目だよ」
裕一は悪戯っぽく笑って結の困った顔を撫でた。
「だって…」
「今、何してた?」
「何も…」
「自分で気持ちよくしてただろ?」
なんで分かるの?
「してない」
「嘘。見せてみ?」
「やだ…」
「なんで」
「なんでも」
「恥ずかしいことしてたろ?
正直に言ったら甘やかしてやる」
そんなの、言えるわけない。
「してない…あんなことするから」
「あんなこと?何した?」
「あの子いるのに…触った」
「あいつの前でも濡らしてピクピクさせてたくせに」
「……違う…」
違わない。結は閉じた脚の付け根で溢れた蜜が後ろに垂れるのを感じた。椅子の上、座ったまま、私は酷く濡らしている。
「しよっか」
可愛い、参った。そんな顔をすると裕一は優しい目で言った。女を駄目にする仮面を裕一は幾つも持っている。
「え?しよって、ここで?」
「いや?」
「だって、カメラ…」
「なんとかする」
「っな……誰か来たら…」
「なんとかする。
ほら…舐めて」
そう言うと裕一はなんでもないような顔でベルトに手を掛けた。結の手を掴むとそのままゆっくり引き寄せた。
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