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3.光
人の群れに近付いてみると、炊き出しのスープと焼き芋が配られていた。長蛇の列が出来ており、二時間ほど待ったと思う。大きめの野菜が入ったスープと、焼き芋を二つ手に入れることが出来た。一人ワンセットまでらしく、家族の分まで貰うことは出来なかった。
芋を一口かじり、残りは食べずに家まで急いだ。途中、持っている食べ物を見て、奪いに来た人は何人かいたけれど、「そこの公園で貰えた」と情報を伝えると、みんな公園の方へ向かって行った。
家に着くと、家族はぐったりしていたが、笑顔で迎えてくれた。スープと芋を分けあって仲良く食べていた。食べ物を奪い合わない。本当に良い家族に恵まれた。
炊き出しの配給は、それから毎日行われるようになった。量は少ないが、あるのと無いのでは、全然違う。
スーパーやコンビニも営業を開始する所が増えてきた。機能停止していたかと思われた政府が、輸入される食料を強制的に確保して販売に回させたり、他国からの援助物資を分配したりしたからのようだ。食料危機の終わりに光が見えて、働く人も戻ってきた。
トイレットペーパーやティッシュペーパーも店頭に戻ってきた。テレビもネットも復活して、何もかも、元通りになってきた。しかし、皆どことなく、ギクシャクしている。食料危機の期間に、人の性格の本性を見てしまったからだろう。
新型ウィルスの感染は、まだ収まらない。でも、きっといつか光が見えるだろう。そのときまで、諦めず、自棄にならず、丁寧に生きて行こう。大介は、そう思った。
(完)
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