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学校が休みにはいり、暇をもてあそばせていた。
そんな中、幼馴染の彼女からの映画のお誘いに対し、二つ返事で引き受けた。
大学生になり、なかなか会う機会が減ってしまっていた彼女と、久しぶりに会えることに内心わくわくした。
何を隠そう、僕は彼女、鈴峰春のことがずっと好きだったのだから。
映画やご飯を済ませて、帰る道中のことだった。
突然立ち止まった彼女に対し、「どうしたの」と声をかけると思いがけないことを言われた。
「私、亮のこと・・ずっと嫌いだった」
彼女からの突然の告白に僕は動揺した。
今のこの状況、傍から見ればいたたまれない場面である。
しかし、今日はエイプリルフール。
そう、嘘をついてよい日である。
そのことに気づかない鈍感野郎ではない。
つまりこの状況を冷静に判断すると、「嫌い」=「好き」である。
両想いだったとは・・
つい嬉しくなり、口角が上がるのをなんとか抑え、平然を装う。
「へぇ」などといいつつも、内心の喜びが止まらない。
だが、ここである問題に気づく。
なんと返答するのが正解なのか。
嘘ではない「好き」と、嘘の「嫌い」どちらをいうべきか。
迷った挙句出した答えが「僕も嫌いだよ」だった。
そういった直後、彼女は「良かった。私、嫌われてなかったんだ」と笑って言った。
なにかおかしい・・
ここで若干、疑問が生じた。
「嫌われてなかった」という言い回しに。
その後、他愛もない話をして解散となった。
流れ的に恋人同士になると思っていた。
しかし、それは僕の勘違いであった。
「嫌い」という言葉が嘘であるということは、「好き」であると思ったがそうではない。
彼女にとって、エイプリルフールでの「嫌い」の意味は「嫌いではない」だったのだ。
要するに、僕はとんだ勘違い野郎だった。
穴があったら埋まりたい、穴がないならスコップを貸してください、掘るんでといった心境だ。
エイプリルフールなんてろくな日じゃない、そう思いながらも彼女に会えたことを嬉しくも思う、そんな一日だった。
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