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付き合って10年記念。
私と彼は中学校からの仲だ。
初めは忘れもしない4月1日。
冗談で告白してみたら相手に真顔で
「俺も好きだったんだ」
といわれてしまい、付き合うことになった私達。
そんな私達もとうとう付き合って10年になる。…手すら繋いだことはないが。
10年記念ともなればそろそろ告白されてされてもいいはずである。
待ち合わせに20分も遅れているがきっとサプライズの準備でもしているのだろう。
ここはマラソンスポットらしく、さっきから仲の良さそうなカップルがずっと走っている。
何でこんなところを告白場所に選んだのか。
まあ、彼は昔からそーゆー抜けているところがあるからな。
そんなのも私からしたら彼の魅力になってしまう。
ベンチに座りのんびりとしていると、
やっと彼からメールが来た。
『悪い。今日行けない』
…へ?
『どしたの?具合でも悪くなった?』
『あーいや。そーゆーのじゃなくてね』
『用事?』
『他に好きな人できた』
…は?
『あ、エイプリルフールか!騙されるとこだったよー笑笑』
『いやさ、真面目な話。
所詮俺たち冗談から始まった仲じゃん。昔は我慢できてたけどそろそろ限界なんだわ。
これ彼女の写真ね』
そう言って送られてきたのは
彼が女の人と抱き合っている写真だった。
加工なんかじゃない。
機械音痴の彼にそんなことできる筈がない。
彼に女兄弟なんていないし、女友達は私が嫉妬するから作らないとも言っていた。
「うそ…」
『てなわけで、今日行けないから。よろしく』
う…そ。
うそ。
うそうそうそ。
うそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそ
うそうそうそうそうそうそうそうそうそうそ
…そっか。ここまでが手の込んだエイプリルフールか。
…エイプリルフールだよ。
うん。
…私とは手すら繋がないのに。
…この人とは抱き合うんだ。
…前、手を繋ごうとしたら断られたっけ。
…そっか。私、避けられてたんだ。
言いようのない涙がこみ上げてくる。
なんでよう。
そんな。
真剣に好きだったのに。
なんで。
酷いよ。
そんなの。
そんな風に泣きじゃくっていると、
「あの…」
ずっと走っていたカップルの男が
私に近づいてハンカチを差し出してきた。
「大丈夫かい?」
サングラスをつけている上に、涙ではっきりと表情は見えなかったけど真剣に私の事を心配してくれているのは間違いなさそうだ。
「よかったら、話聞こうか?」
「…ありがとうございます」
素直に感謝し、私は八つ当たりをするかのように所々怒鳴りながら事の顛末を彼に話した。
「…そっか。それは辛いだろうね」
彼はずっと親身になって相槌を打ったりしながら私の話を聞いてくれた。
「どうかな、君さえ良ければ日帰り傷心旅行
でもしない?」
そう言ってサングラスを外した彼はとっても美形だった。後めっちゃ笑顔だった。
「…はい!!」
あ、美形に釣られたわけじゃないよ?うん。
と言うわけで色々省いて水族館へ。
「そういえば彼女さんはいいんですか?」
さっき仲良さげに走っていた女性を思い出し思い切って言ってみた。
「あはは、実はエイプリルフール!って感じで冗談言ったら怒って泣かれちゃって。
振られちゃったかな?実は同族見つけたから誘ってみた的な感じなんだ。へへっ」
口では笑っていたけど、
どこか心苦しそうだった。
この人もこの人で大変そうだ。
「…私の事も嘘だったらよかったのに」
「その傷を癒すための水族館だろ?
お、これからイルカショーだって!
見にいこうぜ!」
「あ、うん!」
それから彼と過ごした時間はとても楽しかった。いっそ振られたことなど忘れてしまうほどに。
イルカショーでずぶ濡れになったり、
可愛い魚だったり、
綺麗な魚だったり、
甘いスイーツだったり。
本当に。私の心は癒された。
「開園からいたのにもう閉園って!早いな」
「うん!今日はありがと!貴方とっても優しいね!!」
「なんだよ急に」
「ううん。酷いアイツなんかとは違ってホント、いい人だなって」
素直な感想を彼に伝えてみる。
「そっか。本当に酷いヤツだな」
彼も共感してくれて
「でしょー?」
「お前って」
「…ん?」
「あ、悪いちょっとトイレ」
…え?どゆこと?
私、いつの間にか嫌われた?
え?なに?
自分がやらかした所を思い出そうとするが
全く思い浮かばない。
冷や汗ダラダラになりながら
私は彼が出てくるのを待つ。
…。
…。
…。
…やたらと長い
…。
…。
…あ、やっと出てき…。
そう思って彼に先程の事を聞こうとすると。
そこにいたのは 私を振ったヤツだった。
「…ん?」
思わず先程と同じ声を出してしまう。
「いやー!噂の別人になれるメイク?ってヤツやってみたけどほんと気がつかないんだな!!途中から笑い堪えんの必死だったわ!!それにしてもメイクしたくらいで彼氏かどうかわかんなくなるとか酷くね?」
シコーかいろガしょートしマした。
「どした?幽霊見つけたみたいな顔して」
「だって…え?写真…」
「あれ従姉妹。さっき一緒に走ってたのも従姉妹。サングラスかけても気付くかなーと思って走りながら様子見てたのに気付かないし、サングラス外せば流石に気付くと思ったのに気づかねーんだもん。ホント笑い堪えんの大変だったわー」
あ、サングラス外したときの笑顔は
笑い堪えてた顔だったのか。
「じゃあなんで。手。繋いでくれないの?」
「へ?そんなの結婚してからやる事だろ」
超弩ピュアかよ。
「従姉妹とはハグするのに?」
「それはスキンシップだろ」
わけがわからないよ。
「でさ、その…」
ベチン!!!
彼が何かを言いかけたが
その前に鈍い音がした。
まあ私がビンタしたんですけど。
「った!!!!なにすんだよ!」
「こっちのセリフよ!!
いくらエイプリルフールでもやって良いことと悪い事が…」
あれ。頬に何か温かいものが垂れて来た。
拭いても、拭いても。
際限なしに垂れてくる。
「ごめんって」
笑いながら私の頭を冷たい手が撫でた。
「ホントよ。バカ。大っ嫌い」
「それでさ。その。振られた直後で悪いんだけど。」
そう言って彼はポッケに手を突っ込み。
「俺と、結婚してくれませんか?」
「当たり前じゃん。バカ。大好き」
そう言って彼の冷え切った体に飛びついた。
その拍子に指輪がどっかにいって
その後2人でまた買いに行ったのは
オフレコで。
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