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「痛かったら言って下さい」
なんて看護師さんは言うが「痛かったら言って」は「痛くてもやめない」ということだ。私の尊敬する歌手の受け売りなのだが、ゴンっという音とは裏腹に、私の脳内には青空が広がった。
「どうですか?」
と聞かれたが、今は本来の腰痛よりも叩かれた痛みの方が強かった。
「じゃあ、レントゲンがあるのでそのまま行って下さい」
私は再び痛む腰をさすりながら、離れたレントゲン室へ向かうのであった。看護師さんも容赦のないことをする。私は小学生の頃、体育倉庫に閉じ込められたことをきっかけに一時的だが閉所恐怖症気味であった。今はすっかり何ともないが、当時の私はエレベーターに1人で乗れず、1人で閉じ込められるレントゲンが注射針の刺さる血液検査よりも怖かった。
「あれ?碧海さん?なんか背中に貼ってますか?」
技師さんの素っ頓狂な声で思い出した。私は貼るホッカイロの存在をすっかり忘れていたのである。気を取り直して撮影したが、今度は下着についていた飾りが邪魔をし、レントゲン検査でまさかのテイク3となった。
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