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見合いなんて
『いいのかー?麗、結婚するぞ』
神さんから電話がかかってきたのは、顔出ししない俺達の、顔出し無しのMVの打ち合せをしている時だった。
「…今、打ち合せ中なんすけど…」
小声で対応すると。
『あ、そ。もう、相手がうちに来て座ってんだけどな』
神さんは、投げやりな声。
「…え?」
『食事会だとか言うから帰ってみたら、見合い相手が来てたんだ。なかなかいい男だぞ』
「……」
そういえば、今日は知花も用があるって早く帰った。
『ま、仕方ないな。麗が決めることだしな。ただ…幸せになれるかどうかは別として』
「……」
言葉が出てこない。
頭が、まわらない。
『じゃ、悪かったな』
神さんはそっけなくそう言うと、電話を切ってしまった。
「神さん、何だって?」
光史が、俺の顔をのぞきこむ。
「陸?」
俺は、まわらない頭で、だけど…
「わりい…ちょっと、行かないと…」
立ち上がる。
「陸、どこへ…」
センが声をかけたけど、俺は走りだしていた。
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