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フラミンゴとペンギン♡
「…きれいじゃん。」
バージンロードを歩いてきた麗の手を取って笑うと。
「あたりまえでしょ?誰だと思ってんの?」
麗は、照れくさそうに、そう言った。
五月。
俺と麗は、誰が予想したであろう展開になってしまった。
ただ一人、神さんは。
「思惑通り。」
なんて言ってたけど…。
…あの後…
麗の見合いに乗り込んだ翌日。
俺は、麗の双子の弟、誓に呼び出された。
「…麗のこと、本気なんですか?」
公園のベンチ。
誓は、座って指を組んでそう言った。
「…ああ。」
「僕、あなたのこと…すごくかっこいい人だと思います。でも、最近ずっと麗を泣かしてたのは、あなたでしょう?」
「……」
俺は、誓を直視する。
「麗は、すごく強がりでひねくれたとこがあるけど…人一倍繊細なんです。」
「さすが、双子だな。」
「……」
俺は自販機でジュースを二本買うと、一つを誓に渡した。
「…どうも。」
カシッ。
「俺さ。」
俺は、話し始める。
「俺も双子なんだ。」
「…それは…夕べ、聞きました。」
「あ、そっか。そうだったな。」
夕べ、麗の見合いをぶち壊した後。
俺は…当然だが自己紹介を余儀なくされた。
そこで。
双子である事と…
…二階堂の事も、話した。
「その、姉貴とは…」
「……」
「ずーっと、二人きりだったんだ。」
「え…?」
「親とは生き別れみたいになってて…15の時、こっちに連れて来られてさ。初めて家族に会った。」
空を、見上げる。
「だから、気付いたら、あいつしかいないって思ってた。」
「……」
「他の誰も愛せなかった。どんな女と付き合っても、この歳になって麗と出会うまで…自分の分身しか愛せなかった。」
「…僕は…」
「麗も、おまえのことが一番大事だって言ってた。」
「え?」
「俺たち、お互いそういう想いがあったから…こうして、気持ちが繋がったんだと思う。」
「……」
「彼女がいるんだってな。」
「…はい。」
「好きなんだろ?」
「……」
誓は、ものすごく思い詰めたような顔になって。
「…麗の次に…」
小さく、つぶやいた。
「…スッキリしたか?」
「…はい…」
誰にも言えない想いは。
自分を苦しめる。
俺も、麗も…味わった。
「大事な…姉を…」
「……」
「よろしくお願いします…」
誓が、頭をさげた。
「…もちろん、誰よりも大切にするよ。」
俺は、誓の髪の毛をクシャクシャにする。
きっと、泣きたい気分だろう。
でも、これで…
「こっち向いてくださーい。」
大きな声にハッとする。
「はーい、花嫁さんもう少し顔あげてー。」
教会の前、記念撮影はにぎやかな笑顔の中で行われている。
「はい、いきますよー。」
隣の麗は、幸せそうな笑顔。
思わず、俺も小さく笑う。
「麗。」
ふいに、後ろから聖子が顔をのぞかせた。
「?」
「これ、返すわよ。」
聖子の手には、フラミンゴのキーホルダー。
「あ…」
「何が友達にもらった、よ。しらじらしいったら。」
聖子の嫌みに言い返すこともできなくて、俺たちは顔を見合わせる。
「俺も返すぜ。」
続いて、神さんがペンギンのキーホルダーを…
「な…何も今返さなくっても…」
麗が唇を尖らせたけど。
「そんな、大事なもん、いつまでも人に預けてんじゃないわよ。」
聖子に、ピシャリ。
二人して首をすくめてると。
「新婚旅行で、ちゃんとしたもの買って来てよね。」
聖子が、麗の額を人差し指で突いて言った。
…笑顔の麗を見て、安心した。
まだまだ俺達はお互い未知の部分が多い。
だがそれは、知る楽しみがあるとも言える。
今までは、こんな面倒ごめんだと思ってたけど…
「七生さんと義兄さんのお土産、キーホルダーでいいんですって。」
そう言って俺を見上げる麗の前髪に触れて…唇を奪う。
「!!!!」
「うっわ。陸ちゃんまで神さんに感化されてる…」
「て言うかさ、陸、飲み過ぎ…」
「ま、結婚式ってみんなおかしくなっちゃうからね。光史君だってあの時…」
「まこ、それ以上言ったら、おまえの時…」
「あっ…ごめん。何でもないです。」
大事な仲間に囲まれて。
可愛い女を妻として迎えられて。
「タコ。いつまでやってんだ。家でやれ。」
「神が言うかなあ。」
憧れの人と、思いがけず家族になる。
麗と結婚が決まってからの俺は、邪念が消えた。と、みんなに言われた。
そして…前にも増してカッコいい、とも。
ははっ。
なんか、乗せられてる感じしかしねーけど。
「もうっ!!陸さんバカっっ!!」
「はああ?おまえ、愛する夫にバカはねーだろ、おい。」
「あの~…そろそろお写真の方…」
「ああ、そうだった。どうする?神さんと知花ん時みたく、キスして写るか?」
俺の言葉に、目を細めた麗が後ろを振り返る。
そこでは首をすくめるしかない知花と、『やれ』とニヤニヤしながら口パクしてる神さん。
「はい、皆さん視線こちらにー!!」
やけっぱちにも思える、カメラマンの声。
その瞬間、唇を向けた俺の顔に、麗の手の平がピッタリと張り付いた。
「あはははは!!」
カシャッ
満面の笑みの麗と、顔に手を張り付けられた俺と、爆笑顔のみんな。
NGにはなったけど、それはそれで、いい一枚。
「写真ぐらい、ちゃんとした顔で残して♡」
麗がニッコリと、笑ってない笑顔で俺に言う。
その言葉に俺の義理の兄姉は目を細めたが。
何とも麗らしくて笑ってしまう。
「はーい、今度こそー!!」
カシャッ
幸せになれるなら、少しの面倒は……
大歓迎。だな。
うん。
12th 完
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