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その後
こうして、メフィストが俊太の願いをかなえる以前の世界に戻った。どうやら、願い事に関する都合の悪い記憶や証拠はすべて消え去ったらしい。俊太も例外でなく。俊太は相変わらずのさえない一人の男に戻った。ただし、愛とは何か、自分なりに答えを出した、そんな、一人前の男でもあった。魔法のランプは俊太に、望みであった一人の女を与えなかった。しかし、一つの自信を俊太に与えたのだ。ある金曜日の午後七時、俊太はたまたま理央と残業中だ。以前の俊太なら、他愛のない会話さえも、たどたどしくしかできなかったであろう。だけど、今は違う。確実に、着実に、成長した俊太がいた。
「今晩、、食事でも、、どうやろ?」
勇気を出してデートに誘った。わずかな緊張が走る。しかし、それを溶かしてしまうような優しい笑顔、穏やかな声で、
「ええで。」
彼女が言う。愛が萌芽した気がした。それからの日々は、言うまでもないだろう。
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