廃屋にて

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しばらく、シュンスケとジョージは慎重に先に進んでいった。 「この間の毒ガスの大量散布で、コロニーの仲間もだいぶ殺されたけど、他の敵も一緒に死んだみたいだな。  静かなもんだ」 ジョージが言った。 「そういえば、あれから、二本足を見てないな。毒で死ぬとは思わないが」 二本足というのは、巨大な二足歩行する敵のことである。 毒をまき散らす不潔な生き物で、動きは鈍重で、他の脅威に比べれば大したことがないと思われていた。 その二本足が、大量の毒ガスをまき散らして消えてしまったのだ。 「あの頃から、食料が減り始めた気がする。  何か関係があるのかもしれないな」 ジョージの言葉に、シュンスケは考える。 もしかしたら、ここはあの二本足の巣だったのかもしれない。 そして、二本足がため込んでいた食料をシュンスケ達が失敬していた。 二本足がいなくなったのは、巣を放棄したということだろうか。 ならば、シュンスケ達もコロニーの移動自体を考えるべきかもしれない。 「ちょっと待て」 ジョージの声に、シュンスケは思考を途絶える。 「なにか、におわないか」 言われて、立ち止まったシュンスケは、嫌悪感で総毛だった。 女の匂いだった。 ジョージも気付いたようだった。 「いい匂いだな。この近くにコロニーでもあんのか」 ふらふらと歩き始めたジョージに、シュンスケは歯がゆい思いがした。 好きな女がいて、子供がいて、それでも女のフェロモンに勝てないのが、ジョージと言う男だった。 シュンスケには、理解できないことだった。 そして、その冷静さが、彼らを救った。 何故気付かなかったのだろうか。自分達よりも何倍も大きな生き物がいた。 ジョージの1センチほど上方。 薄目を開けた4本足の毛むくじゃらな生物が、ジョージを品定めするように、鼻をうごめかせていた。
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