始まりは突然に

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始まりは突然に

二週間前。  普通の会社員であった俺が、残業終わりの電車の中で眠気と戦いながら座っていた。 隣の席の若い男2人が、妙な話をしているのを小耳に挟んだ。ボソボソとした声。 「父親が話してたんだけどさ、超極秘のマル秘なんだけど……地球がヤバいらしい」 隣に座る友人らしき男が、呆れた顔をしていた。 「何だよそれ。あー お前の親父、科学者だっけ…… そっちの話か? 」 男は訳知り顔で 「そう。後一週間位でかなりヤバいらしいよ。政府も知ってるけど、国民がパニックになるから、まだ知らせないんだって 」 「何でお前が知ってるんだよ 」 「父親が母親と話してるのを聞いたんだ。安全な場所に逃げようって 」 「安全な場所はあんのか? 」 「何処かに在るらしいよ。これから帰って荷造りする。君は友人だから教えておく。信じるか信じないかは君が決めてくれ 」  俺は、夢でも見てるんだろうと思った。 この地球がヤバくなるってイメージがつかないし。ハッとして気がついたら降りる駅だった。横を見ると男2人はいなくなっていた。 「何だよ、本当に夢か…… 」  それからの一週間。 俺は、喉に刺さった魚の小骨のように、あの晩の男2人の会話が、頭から離れなかった。無駄だと思いつつ、スマホで食料や生活に必要な物を注文していった。家族四人分。  会社の同僚や、実家の両親、趣味の仲間に報せるべきかかなり迷った。しかし、国民のパニック……それ以前にデマだと責められるのが怖かったのもある。  誰にも相談できないまま、時が過ぎようとしていた。間違いなら俺一人が笑って済ませればいい。 大量の商品が家に届けられ、さすがに妻に突っ込まれた。 妻には話してしまおうか……!?  そんな中…… 三日前に国から突然の発表があった。突き放したような言葉に、国民はパニックの大混乱。買い占めが起こり、暴動が起きて、ある種のお祭り騒ぎのようだった。 妻は、俺を見ると何か言いたそうにしたが、結局何も言わなかった。  一週間後の朝。 窓の外を見たら、そこは見たことのない景色だった。
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