69人が本棚に入れています
本棚に追加
俺たちもカート2台にカゴを乗せて、野菜や、肉魚、日持ちのするものや、食べられなかった生物や、子供たちのお菓子も入れて行った。だが、回りを見ても、買い占めをするような人はいなかった。
「何だか、穏やかで何もなかったみたいね」
「本当だな。まぁ、暴動が起きるよりはいいか。せっかくだから、フードコートで食べていこうか。」
久しぶりの買い物に外食。子供たちは大喜びだ。
……こうなってから、三食を食べられる事の有り難さを痛感した。そして、いつも仕事で家にいない俺は育児の大変さを身を持って知った。それから俺と子供たちは、家事をアシストする事を始めた。いつ元に戻るとも知れないが、時間はたくさんある。俺は丁寧に生きようと決めた。
会計をした時に、この違和感の意味がわかった。レシートの日付が半年前なのだ。地球の異変が起こる前。だから、こんなに穏やかな日常だったのだ。その光景が目に眩しく映った。
何千年も前の恐竜が生きてる時代に放り込まれたかと思えば、どうなって浮かんでいるのかわからないが、玄関開けたら門の外に雲。家の中にいて、浮かんでいる感覚がたまにある。まるで風に流されているかのようだった。
海の中では、さすがに玄関が開けられず、2階の天窓から見上げた。穏やかな海の中、魚が泳いでいた。天然の水族館。実家の両親から大成の小学校の入学祝にもらった百科事典を片手に、家族で飽きることなく眺めて一日が終わった事もあった。
「パパ、鳴ってるよ!」
大成の声にハッとした。慌てて注文した物を取りに行った。
「いただきます 」
久しぶりの外食と言っても、異変が起きてからまだ二週間しかたっていない。
この日常を脅かす出来事を知っているのは、恐らく俺たち家族だけだろう。
あの時も迷ったが、ここにいる人たちに、地球の異変を報せるべきか迷う……
食べ終わり食器類を片付けて、カートを押して出口に向かった。子供たちは、アミューズメントで遊びたがったが、俺には行きたい所があったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!