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「パパーー早く行こうよ!!」
大成が待ちきれないように、手をひっばる。俺たちが密かに命名した、子供遊園地がある。子供が安心して遊べる遊具と走り回れるスペースがあるのだ。ここは、高台にあるせいか景色がいい。そして、ドッグランもあり、動物好きの妻と結女が喜ぶ。
散々遊び、空いてるベンチに腰掛けて、サンドイッチとお菓子を食べた。大成と結女にあくびが出始めた。妻が結女を抱き上げ、大成は俺にしがみついてきた。
「そろそろ帰ろうか 」
「そうね。今日はありがとう 」
「うん。三月に来られなかったからな。この後、家の側に行ってみようか 」
妻が驚いた顔をする。
「パパの実家に寄らなくていいの? 次にいつ行けるかわからないのに 」
車に戻るために、並んで歩きながら
「元気な両親を見たら、何を話し出すかわからないし、話したら頭おかしいと思われるかもしれない。兄夫婦もいるし、何とかやってるだろう…… 」
車に戻ると妻が運転を変わってくれた。大成と走り回り相当くたびれた俺は助かった。そして、いつの間にか眠ってしまった。
結女のぐずる泣き声で目が覚めた。
「ごめん、寝てた 」
運転席の妻に謝ると、
「疲れたでしょ、大丈夫よ。結女がぐずってるけど、すぐ寝るわ 」
妻の言う通り、結女は直ぐに寝てしまった。前の席で、大成も静かに眠っている。妻だけが起きて運転していた。申し訳ない……
「運転変わろうか? 」
「大丈夫よ。もう着いたから 」
「え?ここは…… 」
車の外を見ると、そこは俺の実家だった。外は夕暮れで、間もなく夜が来る。ちょうど向こうから、買い物帰りと思われる両親と兄夫婦と甥っ子姪っ子が歩いてきた。
そこにあるのは半年前の日常。
車に気づいた兄貴が近寄ってきた。
「どうした、拓斗こんな時間に珍しいな。」
「忍の両親の墓参りの帰りなんだ 」
「あら拓斗、寄っていったら?」
母親から声を掛けられたが、遅くなるし顔を見られただけで充分だと思った。
しかし……目が覚めた大成が甥っ子と遊びたがり、大成の声で目を覚ました結女も遊びたいと泣き出して、結局、上がって行くことにした。
夕飯の時間になり、久しぶりに家族全員で食事をした。懐かしいお袋の味。わいわいとうるさい程の賑やかな声に、ホッと癒される自分がいた……
子供たちと一緒に風呂に入った。
いつでも泊まれるように着替えを数枚置いて帰るのでパジャマもある。手ぶらで帰省できるようにしていたので助かった。
今日も1日元気いっぱいにはしゃいだ子供たちはリビングで寝てしまった。起こして帰るのも忍びなく、両親にも勧められて泊まって行くことにした。
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