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「どうかしたんですか? というか、なんでいきなり頭を撫でたんですか!?」
「あ…………それは、今まで無礼な態度をしてごめん、と思って」
「言葉で言ってくださいよ!」
「あ、うん。ごめん」
緋月は俯きながら少しだけ歩いて、止まった。ついてくるつもりらしい信武が後ろにいるのが分かる。
「どうしたんですか? ……あ、僕は緋月さんが僕の話を聞いてくれるまでついていきます!」
「俺に勝手についてくるのは構わないけど。……まあ、きみの話は全部聞いてあげるよ。頼み事があるなら、それも受ける。なんか気が変わったから」
「本当ですか!」
信武は表情を明るくさせ、すぐに緋月の横に並んだ。緋月はそんな彼を見て、優しげに笑う。
町人の横に並ぶ、武士。端から見ればおかしいだろうが、緋月は懐かしいと思った。
昔も、姓がある身分の高い人と横に並んで歩いた。……今は便りさえ貰えない状況だけど。
「今更、嫌われる原因が一つ増えてもいいや」
年下の少年には聞こえないように、そっと呟いた。
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