第一章

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※  赤と紫が混じったような汚い色の空が見えた。周りは草一本も生えていない荒野を走っている。  走っていると判断できたのは、視点が小刻みに揺れていたから。そして、足音が急ぐような、慌てているようなものに聞こえるからだ。  後ろを振り返ったのだろうか、ぐるんと視点が動く。そこに女の上半身と百足の下半身をした異形を見つけたとき、視点が何もない荒野へと戻る。  主観的な視点だ。誰がその荒野を走っているのかとか、どうして後ろに大百足女妖怪がいるのかとか、判断する材料が見つからない。  だが、一つだけ言えるのは、視点の主が百足女に追われていることだ。  果たしてこの光景がどのようにして起こるのか。  間接的に見た彼には分からなかった。
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