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頭巾で頭を隠した少女は逃げていた。時々後ろを振り返りながら。
明るい町中を、少女は怯えながら駆け抜ける。時々人とぶつかりそうになるが、少女は小回りを利かせて素早く対処した。
……一刻も早く京を出よう。そうしなければ殺されてしまう。
少女は恐怖と決心を頭の中に残し、町を走る。少女は顔に似合わぬ脚力で、人の合間を縫う。
だが、逃走は長く続かなかった。
頭に向かって放たれたものに少女は気づいた。苦無。昔から忍の道を進む者にとって、使われてきた暗器だ。
少女は首を傾け、暗器を避ける。だが避けたところに人がぶつかってきた。苦無は頭を傷つけることはなかったが、少女が身につけていた頭巾を切り裂いた。
裂けた頭巾は少女の頭を隠す役割を果たすことなく、地面に落ちた。
たちまち、周囲に悲鳴が響く。少女は己がこれ以上逃げられないことを悟った。
少女は雪のようなという表現が似合うほどの白い髪と、金色の瞳をしていた。
「鬼の子か」
「白い鬼の子……」
町の人々は口々に少女を鬼の子だと言う。
いつの間にか、少女は町の人に囲まれていた。
少女は一つ溜息を吐くと、目を閉じた。
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