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桜が舞う。ゆっくりと、風に乗って。陽光を浴びた草が風にそよぐ。
緋色の蝶が、ひら、と桜の花びらを縫うように飛んだ。花びらに触れないよう遊んでいるようだ。ひら、ふわ、と桜の木の周りを優雅に飛んでいる。
「緋蝶(ヒチョウ)」
名を呼ばれた緋色の蝶は、自らの主の方へ飛び、白く長い指に留まった。
緋蝶の主は嬉しそうに、小さく声を出して笑った。
「……やっと、会えるね」
長かった。でも、もうあの子を待たなくて良い。自分から会いに行けるから。
「緋蝶も嬉しい?」
肯定するように、緋蝶はくるくると円を描くように飛んだ。
「五年ぶりだもんね。あの子、私たちのことを覚えてくれているかな? 覚えていると嬉しいなあ」
緋蝶の主は桜の木に背中を向けた。
「行こうか。あの子を捜さないと」
緋蝶の主は歩き出した。大切な、大切な人を見付けに。
緋蝶は、静かに主の背中を追った。
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