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「……笑ったり、疑ったりしないでくださいね?」
「なにを今更。話は聞くって約束したでしょ、きみが嫌がることはしないよ」
「僕を呼ぶモノをどうにかしてほしいんです」
緋月は怪訝そうにした。
「どうにか、とはどういう意味? いなくなってほしいの? 静かになればいいの?」
「いなくなる、というよりは成仏してほしいです。あとできれば僕を呼ぶ理由が知りたいんですが」
「それくらいなら構わないけど、俺は依頼に見合う報酬をもらう。この依頼は高いよ? 安定した収入のないきみに支払えるの?」
「どのくらいですか?」
「大判百枚(約六六〇万円。一両=六十六万円計算)かな。全部、前払いでね」
「大判百枚……!? 前払い!?」
目玉が飛び出そうなほど信武の目が見開かれる。緋月は涼しげな顔で茶をすすった。温かい煎茶が甘かった口をすっきりとさせる。
「まず、依頼の内容が不明瞭。きみの中の成仏ってどんなことを言うの? 相手が快く消えること? それとも相手の意志なんか関係なしに消えてもらうこと?」
「それはもちろん、快く……」
「それって、『きみを食べたら潔く異界に帰ります。二度と人間界に姿を見せません』と言われても同じことが言える? 俺はきみがそれでもと言うなら構わないよ。さっきも言ったとおり、前払いじゃなきゃ仕事しないから」
金さえもらえれば、依頼主の条件に合わせて動く。それが緋月だ。たとえそれで依頼主が命を落とすとしても、知ったことではない。依頼をしてきた本人の浅はかさが問題だ。
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