第二章

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※  準備をすると言った緋月に信武がついてくる形で、二人は京の都を歩く。  京は活気があり、町を歩く人々で賑やかだった。品物を売る威勢の良い声、道端で楽しそうに会話する表情。これだけでも、見ていて楽しい。  緋月は明るい人々の姿を見ながら、信武の話に耳を傾ける。 「そういえば僕、初めてなんですよ。自分以外に妖怪が見える人を見つけたの」  信武は嬉しそうに緋月を見上げている。その表情は仲間を見つけた子供のように純粋な笑顔だ。 「緋月さんも妖怪が見えますよね? 昨日、黒い手から僕を助けてくださいましたし」 「まあ、見えるね」 「やっぱり! 良かったぁ」  緋月の言葉に、安心したような声が返ってきた。 「あ、緋月さん、あそこにいるのは見えますか?」  声につられて信武と同じ方向を見ると、白い毛の猫が気持ちよさそうに屋根の上で寝ていた。しかしこの猫、ただの猫ではなかった。白い毛並みに、尻尾が二本。愛らしいが、尻尾の数が多い。 「あれは猫又だね。気づかれたら食べられるかもね。猫又は昔、人間を食べたと言われているから」 「すごい! 緋月さんは、妖怪についての知識もあるんですね!」 「……まあ、多少は」  緋月は困ったように言葉を返した。こんな知識はいらなかったのに、と苦い思いが浮かぶ。信武は彼の様子に、ああ、と勝手に納得する。 「ここは町の中ですから、人の目がありますよね。すいません」 「別にいいよ」 「僕も、昔から妖怪の類が見えたので、周りの人から嫌がられてきたんですよ。今はそういうことを言わなくなったので、見えるということを知っている人のほうが少なくなっていますけど……」  緋月は黙って彼の言葉を聞いていた。目を動かして信武を見ると、彼はやや俯いていた。緋月は視線を前に戻した。……こんな時、相手はどんな言葉が欲しいのだろう。緋月には分からない。 「あの、緋月さんはどんな日常を送っているんですか?」 「俺は朝餉を食べたら、こうやって散歩をしているよ。そのついでに依頼をこなしてお金を貯めているかな」 「その間、妖怪に襲われないのですか?」 「襲われないよ。そもそも妖怪は俺に気付けない」 「え? 目が合っても、緋月さんは妖怪に気付かないふりをしているんですか?」 「いや、俺は見ているよ。時々面白い姿の妖怪がいるから。でも、妖怪には夜でも絶対に襲われない」 「お守りを身に付けているとか?」 「身に付け……てはいないかな」  緋月は不思議そうな信武に、それ以上はなにも言わずに、視線を前に移す。少し離れたところで、人集が出来ているのを見つけた。 「なんて……子なんだ」 「赤い鬼の次は…………なんて」  こんな風に町の人々の会話が耳に入る。はっきりと内容が聞こえないのは、人々が様々なことを同時に口に出しているからだ。
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