side ひかり

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* 「私、そろそろ…」 「だめ…」 さっきから何度もそう言ってベッドから出ようとするのに、その度に雅樹君が私を抱き締めて離してくれない。 「雅樹君……今日は…」 「このままここに泊まっちゃいなよ。 ……ううん、もうずっと帰らないでここに住んだら良いんだ。」 「そ、そんなこと…」 「……ひかり、あんなことされても、まだシュウさんのことが好きなの?」 「……それは……」 すぐに好きだとは答えられなかったけど… でも、今日のことですごく傷付いたけど、だからといってシュウのことが急に大嫌いになったわけじゃない。 ……そんな簡単に嫌いになれるくらいだったら、こんなに傷付かない。 「雅樹君、ごめんね… 私、もう行かなきゃ…」 雅樹君の隙をついて、私は起き上がった。 「ひかり…」 雅樹君の声は切なかったけど、私は急いで服を着て、身支度を整えた。 「ひかり… 本気で考えてみて。 僕…ひかりがこれ以上傷付くのを見たくないよ。」 「……雅樹君、心配かけてごめんね… でも…私なら大丈夫だから… 本当に雅樹君には感謝してる…」 そう言って、私は雅樹君の家を飛び出した。 雅樹君の私を呼ぶ声に耳を閉ざして… 家が近付いて来るにつれて私の気持ちはまたどんどん重くなって、歩く速度もカメみたいに遅くなっていた。 「今から帰るね。 今、コンビニの前だけど、なにか買ってくるものある?」 私はシュウのそんなメールを打っていた。 もしも、家にまだここあちゃんがいたりしたらショックだから… 「特にない。 気をつけて帰って来いよ。」 シュウからの返信はすぐに来た。 それは、ここあちゃんがもう家にはいないってこと。 (……良かった…) おかしいけれど、それでほんの少し胸のつかえが取れたような気がした。 やっぱり…こんなことがあっても、やっぱり私はシュウが好きで… 別れたくないと思ってる。 だけど、私がそう思ってても、シュウがここあちゃんに本気になってしまったら… ここあちゃんと隼人君がラブラブだっていう設定がある以上、二人がくっつくなんてことはないとは思うけど、それでもやっぱり心配だった。 だって、あのここあちゃんだもの。 私なんかとは比べものにならない。 でもでも、シュウが私にぞっこんっていう設定もあるにはある。 だけど、それならそもそも浮気なんてするはずないのに、どうして… 少しも考えがまとまらないまま、いつの間にか私はマンションの前に着いていた。
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