第1章 面接

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梅雨明けの蒸し暑い中、豊本吉秀は着慣れないスーツをまとい、京浜急行空港線の大鳥居駅に降り立った。 電車の中は、クーラーのおかげでまだ快適であったが、電車を出ると、サウナのような熱さと湿気を浴びることになる。 大鳥居駅は、まだ地下にあるおかげで、直射日光があたることはなかったが、改札を出たとたん、強力な直射日光と梅雨明けの湿気が交じり合って、スーツの下は、汗だくになっていた。 豊本は汗の溜まった腕時計に目を落とした。 まだ、面接の時間まで、四十分以上もある。 どうやらちょっと気合を入れて、早く着過ぎたようだ。 なるべく早く、喫茶店に入って、快適な環境下で、面接対策でも考えたかったが、今から行く中堅の家電メーカーが、まだ面接一社目であり、会社周りの最初のうちから、出費を多くはしたくなかった。 そのため、汗だくではあったが、面接時間まで、このあたりをぶらつくことにした。
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