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部屋に入ると五十代前半と思われる、太って頭が少し寂しくなっている男が、奥の机に座っているのが見えた。
その男の前に机があるにも関わらず、お腹が出ているのが分かった。
社長と思われる男は、しばらく机の上にある図面を見つめていたが、豊本が入っていくとゆっくり顔を上げ、にこりとして、手招きをした。
顔は、脂ぎっているが、表裏のなさそうな、どこか憎めない顔をしている。
この社長と思しき男は、何も言わず、豊本のことを頭のてっぺんから足元まで舐めるように眺めてから言った。
「よし、決まった。今年の社員第一号だ。」
あまりの言葉に豊本もびっくりした。
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