白銀の月

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「次代様、どちらへ行かれるんですか」  ある時、白夜の作ったカラクリを突破し、ニヤリと笑った。「この程度で俺を騙せると思うなよ、クソガキがふはははは!」と声高に叫びたかったが、目付役のため、彼女の機嫌を損ねることは出来なかった。 「……お前はいつもいつも私につきまとうな! 私の追っかけか!」  涙目で言われたところで痛くも痒くもない。こちとら、城からの脱走を図るために地下に穴を掘り、大人に見つかって尻を叩かれた経験があるのだ。  そもそもこれくらいの失敗で泣かれてはこの先、民を引っ張ることなど出来はしない。 「追っかけではなく、あなたのお目付役です、次代様。部屋に行きましょう。それとも読書がいいですか?」 「どちらも飽きた! 私は別のことがしたいんだ!」 「おや、我が儘ですね。それなら剣の勉強でもしますか? 体力づくりもいいですね」  白夜は急に黙り込んだ。銀作が白夜の様子を見ると、彼女は下を向き、小さな桜色の唇を開いた。 「外に……」  銀作は小さな子供の表情を見つめる。彼女は瞳にきらきらとした夢と希望、期待などを宿して銀作を見つめ返した。 「外に行かせてくれ、銀作。外には広い空も果てのない大地もあると聞く。私はそれが見た……」  銀作は右手で白夜の小さな口を塞ぐと、壁に身体を打ちつけた。 「……ふざけんじゃねえよ」  ぎらぎらと、真っ白に燃える炎のような瞳に、白夜は震えた。 「外に出たい? そんなの、俺だって同じだ。あなたの目付役に命じられなければ、今頃うまい飯も、綺麗な景色も、尽きることのない知識もこの身で体験することが出来たはずなんだ」  城の窓から見える外の景色は、灰色の空と白い雪しかない。白銀の髪と瞳を持つ自分たちを隠してしまうような、一面の白。  初めて外に出られたとき、たくさんの色がそこにあって、世界は暖かいのだと実感した。
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