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「おまえが、おまえだけが外に出るなんて許さない! 銀作は私の傍を離れず、私と一緒にいろ!」
子供故の純粋な言葉が、白い光となって、銀作の左胸に突き刺さる。
「ぐっ……!」
呪縛をかけられた、と気づいたときには遅かった。胸元への違和感。心臓が締め付けられる気持ち悪さ。
「ババ様、俺! 俺の着物を脱がしてくれ!」
「若いモンは元気じゃのう」
「顔を赤らめるな! 悠長にしてる場合じゃねえんだよ! 左手がないんだから、さっさと脱ぐのを手伝ってくれ!」
「ほいほい」
ぱちん、と当代が指を鳴らすと、銀作の着物は左胸が見えるように肌蹴た。そこには白い龍の紋様がくっきりと浮かび上がっていた。
「龍縛とは、これまた難しいものをあっさりと使ったのぉ。流石わたしが次代にと見込んだ娘じゃ」
「褒めてる場合じゃねえよ! なんだよこれ、どうすれば解けるんだ!?」
「龍縛は、文字通り龍さえも縛るのろい。かけられたものは、かけられる前の術者の言霊で効果が変わるからのぉ。銀作、試しにこの子から離れてみ」
銀作は二人から離れた。廊下を駆け抜けて。しかし離れるほど、心臓が鷲掴みにされたように苦しくなる。
「もう、無理」
しまいに、銀作はぱたりと倒れた。その様子に白夜は驚き、彼に駆け寄る。
「銀作、銀作。大丈夫?」
揺すっても銀作は返事をしない。白夜は顔を真っ青にさせた。
「ババ様、銀作が死んだぁ!」
「勝手に殺すな、このクソガキ」
優しく頬を叩く。だるそうに銀作は起き上がると、溜息を吐いた。
「本当におまえから離れると死にそうなくらい胸が痛いんだけど」
「なんじゃ、告白か? ちいと年が離れておるが、まあ許容範囲じゃろ」
当代が楽しそうに笑う。
「誰がのろいをかけたやつに愛を語るか!」
銀作が当代に怒れば、全然倒れそうにない老婆はけらけらと笑う。
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