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「これでお前はこの子から離れられなくなったわけじゃ。おそらく、一生城の中での生活になるのぉ」
ぴくり、と銀作が反応する。ちろりと白夜へ視線を向け、また溜息を吐く。
「まったく……自分勝手なのろいを人に押しつけやがって」
「お前が私を置いて外に出ようとしたのが悪い!」
「ガキが生意気言ってんじゃねえよ。次代なら次代らしく民のことを考えてろ。自分のことは二の次だろ」
「なっ……!」
白夜の顔が怒りで真っ赤に染まる。
「銀作なんて……」
「あ?」
「銀作なんて嫌いだ!」
逃げ出した彼女に、銀作は手を伸ばす。しかし素早い彼女の手を掴むことは出来なかった。
途端に、胸を握りつぶされるような激痛が襲う。
「痛い、痛いっ!」
「あの子を怒らせた罰じゃな」
「ふざけんじゃねえよ、あのガキ!」
銀作は立ち上がると、ふらふらと歩き出す。
「そうやって、いつまでもお互いを止めておくれ」
当代のその声は、銀作の耳に入らなかった。
追いかけてみれば、案外遠くまで行っていなかった。銀作は子猫を持ち上げるように白夜の着物の襟を掴むと、彼女は蛙が潰れたような声を出した。
銀作が白夜の顔が見えるように持ち直すと、彼女は林檎のように顔を真っ赤にさせていた。目には涙が溜まっている。泣き虫、と言ってやりたいのを堪える。
「なんだ、たまには一人にさせろ!」
「お前が離れると、死にそうなんだけど。胸が痛くて」
「気持ち悪いことを言うな!」
「はいはい。部屋に帰るぞ」
いつもの適当な感じで接すれば、彼女の顔の赤みが落ち着いてくる。
「怒っていないのか?」
「怒ってるよ、あんたを雪の中に放り出して結界に閉じ込めて凍傷にさせたいくらいには」
「なんて怖いことを言うんだ」
銀作はニコリともしない。その余裕さえもなかった。
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