白銀の月

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『あれ、次代様と銀作じゃないか』  甲高い声が聞こえて、二人は振り返る。 「五郎丸」  オウムを肩に乗せた若者が現れる。この男、五郎丸は両親に「名前付けるの飽きた」 という理由で五郎丸という、白銀の民らしくない名を与えられたのである。  五郎丸は駆け寄ってくると、オウムが口を開いた。 『銀作、次代様と遊ぶのか? ぼくも暇なんだ』 「おまえはオウムとしりとりでもしてろ。俺はこれから次代様にのろいを解いてもらうんだ」 『しりとりと言っても、一人二役だから面白くないよ。ぼくの考えていることはオウムが言っちゃうから』  銀作の言葉にオウムが返す。  白銀の民は、生まれつき術が使える代わりに、体の一部が機能しない。銀作が左腕を使えないとすれば、五郎丸は喉だった。五郎丸は産声をあげたこともない。肩に乗っているオウムが、五郎丸の声だった。 『それよりものろいって?』 「ちょっと次代様に術をかけられてな。解いてもらわないと湯浴みも寝るときも傍にいないといけなくなるんだ」 「は!?」  術を使った本人が顔を真っ赤にし、驚いている。やはり子供というものは後先考えないものだ。こちらの負担を少しは考えてほしい。 『へえ、離れられなくなる術? 聞いたことがないなぁ、やっぱり次代様はすごいんですね』  オウムの高い声がそう言い、言わせている五郎丸は手をぱちぱちと叩いた。 「まあ、そういうわけだ。今日は部屋にいるから、暇なら代わりに俺の部屋の掃除でもしていてくれ」 『自分でやりなよ!』  むすぅ、と五郎丸が下から睨みつけてくる。年下で、実年齢より若く見える彼に怒られても怖くも何ともない。 「冗談だ。俺の部屋の物に触ったら許さない」  ぱちん、とウインクつきでからかえば、五郎丸は一瞬きょとんとしたあと、『じゃあ頼むな!』と怒っていた。
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