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この二年で学んだだけでは調律師にはなれないと聞いた時、雷に撃たれたようなショックを受けた。
普通は卒業後の2、3年、台数をこなして、経験を積まなければいけないそうだ。
それで、先生にいい方法がないか尋ねたところ、二つ提案を頂いた。
ひとつは、レッスン室のピアノを全部調律して回ること。
もうひとつは、88鍵全て調律すること。(最初、学生は1オクターブだけ調律できればオーケー)。
ここに入学した同期は80名。一年過ぎた今、既に半分に減った。
と言うのも、この専門学校を志望した動機が各々違うからだ。
ある人は、東京が近いから。
ある人は、ピアノは好きだけど、プロになるほど上手くないから。
またある人は、音楽活動に携わる環境だけが必要で、別の分野のプロを目指しているから。
そういう訳で、テスト明けのこの練習用調律ピアノはガラ空きだ。30台設置されている中、僕が20台使おうが誰も文句を言わない。
僕は毎日、15〜20台のピアノを444、442、440、438Hzと微妙に高さを変えながら調律している。
外装、鍵押さえ、マフラーバーを外す。基音を作るためのロングミュートを弦にはめ込み、準備を整えた。
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