たかが3円、されど3円

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たかが3円、されど3円

午後は鬼の安野先生のピアノレッスンを受け、いつも以上に怒られ、ヘロヘロのペラペラでレッスン室を出た。 ごおおおおおおおおっ! 僕の腹の音である。 もうダメだ限界だ。断食一日目にしてこんなにつらいなんて。1週間過ぎた頃には、死体になっているかもしれない。 僕は土手道をフラフラしながら帰った。歩きが辛い。ハッ、その辺に生えている草で、何か食べられるものがあるんじゃないだろうか。 そう思って顔を上げた僕の横を、芝犬が元気に駆け下りていって、そこら中におしっこをした。 あああああっ! 憎い! もういい。僕は電話する。親に頼るんだ。 餓死した息子を見るほうが、両親は悲しむに違いない。 一旦決意すると現金なもので、僕は猫背を真っ直ぐにして元気に家に向かった。希望があるとはこういうことさ!
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