たかが3円、されど3円

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その途中、スーパーでトイレを借りた。ついでに、3円で買えるものがないかチラ見したが、ひとつもなかった。フッ、やはりな。分かってはいた。 しょぼくれながらレジの横を通り過ぎていると、今まさに会計をしている女子高生が、財布の小銭入れを指で引っ掻きながら「あれっ、あれっ?」と慌てている。 「3円足りない……」 3円。 彼女は鞄の中のポケットや制服のポケットにも手を突っ込んでいるが、それでもない。 そうか。神様が僕に3円を残していたのは、この子のためだったのか。 僕はレジに近づき、なけなしの3円をレジのトレーに乗せた。 「差し上げます」 「えっ? いいの?」 ギャル風の女の子は驚いて顔を上げた。サラサラの茶髪がキラリと光った。日本人にはあり得ないだろうという長さの睫毛を瞬かせた後、Fコードのような素直な笑顔で笑う。 「ありがとう!」 ああ。僕は全財産を失ったけれど。君の役に立てて良かった。 一人感慨に耽りながらスーパーを去った僕。不意に背中の方から駆けてくる音が近づいてきた。 「待って!……『3円』さん!」
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