たかが3円、されど3円

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彼女は『米蔵(よねくら)沙彩(さあや)さん』というらしい。家にお米がたくさん備蓄されていそうな名前だ。 「ここだよ」と紹介されたのは、掘建て小屋をちょっと良くしたような、木造家屋だった。 「ばあちゃんー、ただいま!」 家を突き抜けるような大声を掛けると、沙彩さんは玄関を上がり、僕の手から重い買い物袋を受け取って奥へ進む。 「最上くん、あがって」 「あ、いいんですか?」 玄関先でもらえるものだと思っていた。僕は背中とくっつきそうなお腹を摩りながら、軋む廊下を踏んで付いて行った。 障子の仕切り戸が廊下の左右に並ぶ。沙彩さんは右奥の唯一のすりガラスの扉を開けた。そこは台所。 夕方ではあったが、奥にある窓から明るい日が入ってきていた。 「ばあちゃん、散歩かなあ。取り敢えず座って」 沙彩さんは僕を小さなテーブルセット席に座らせ、ヤカンを火にかけてから、買ってきたものを手際良く片し始めた。 お湯が沸き、玄米茶の香りが立ちのぼる。ああ、癒される。 「お待たせ!」 沙彩さんが出してくれた饅頭は、薄くて白い皮の奥に、餡子が詰まっている様相を呈していた。
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