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アドニスさんにキルシュからシャリュトリューズへ強制送還されるのはこれで二度目。
前回は本当に強制でアドニスさん自身も来て連れて行かれたけれど今回は迎えの馬車を送ってくれただけだから乗らないという選択肢もあった。
でも今回も僕が悪い所があるから従った。
以前は久しぶりにシャリュトリューズの町並みを見て“わぁ、青い!”と改めて感動したのだけれど今回はその感動がなかった。
ラズール様の綺麗な青い瞳を見ていたからかもしれない。
変な気分だ。ラズール様は近くにいないのに傍にいるようなそんな。安心する場所のはずなのにドキドキもするような。
「アドニスさんごめんなさい。帰る約束をしていたのに帰らなかったから迎えを寄越してくれたのですよね?」
シャリュトリューズに着いてまず、とにかくまずアドニスさんの元へ。
皆には後から会いに行くとして。
アドニスさんはエルが執務をしている部屋に一緒にいて、エルに何か言われるかと身構えたけれどお帰りすら言われなかった。久しぶりなのにいつも通りだ。
変によそよそしくなったり優しくなったりしないからエルの存在は有り難い。
皆心配してくれてそれも嬉しいけれど心配され過ぎて申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまうから。
今回で言うならキルシュへ移った事は僕の判断でいけない事ではないと無言で説得してくれているような。僕がそう思うだけでエルは何も思っていないかもしれない。
でもそう思っていたら僕も優しい気持ちになれるので事実がどうであれいいのだ。
「ああそっち?それはまぁ、少し寂しかったけどレインが向こうで一生懸命やっているんだろうなって思って応援していたよ。それよりも」
肩を持ってソファに座らされた。
「はい、何でしょう?」
「ラズールさんとの事。どういう事なのレイン。レインもラズールさんを好きなんでしょ?」
「え、ちょ、あのっ」
アドニスさんに手紙で相談をしていたとはいえそれで呼び戻されるとは思ってもみなかった。
それだけが理由ではないのだろうけど一番に聞かれるということはそういうことなんだと思う、たぶん。
エルには何も言っていないからエルには聞かれたくなかった。だって恥ずかしいし馬鹿にされるかもしれない。
エルの方に頭を振ってみたらアドニスさんは「どうせエルはラズールさんから話を聞いてると思うよ。そうだよねエル?」
「ああ。というかそのもっと前からラズールがレインに気があるのは知っていたからな。“レインの事は誰よりも好きな自信があるけどまだ知らない事が多いのも事実で今はエルの方がレインの物事の考え方とか分かっていると思うから”って態々前置きしてから話を聞かされた」
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