プロローグ

1/3
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ

プロローグ

 あの日見上げた空は信じられないくらい真っ赤で、誰が見ても異常で異様な景色。全人類が空を見て怯えて……何も起きない明日を祈った……。  しかし、その次の日には青く戻った空のもとで死が始まった。  原因不明……凶悪な感染症であることは間違いないと思われるが、来る日も来る日も――次々と為す術なく人間が死んでいく。その勢いは誰にも止められず、積み上げられた死体の山の前に日本の国立感染研究所も世界中の専門家たちも生あるうちに答えを見つけられず敗れ去った。  そして、この病にはある特異な性質があった。年齢が高い者ほど病に侵されやすかったのだ。  最初の人間が死んでから、ものの一週間でお年寄りと呼べるような60歳以上の人間は全ていなくなった。それを悲しむ時間もなく、次の週には50歳以上が全て死んでしまい、また次の週には40歳以上が全て死んだ。  そんな具合で広がっていった病が大人を全て殺してしまったという事実を確認して見届ける者もいなかったので、実際に全滅したかどうかは分からないが――少なくとも見ることは無くなった。  20歳以上の人間はこの世からいなくなってしまった。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!