プロローグ

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 言うまでもなく、人類の歴史上最大の感染病――尋常ではない猛威を振るった謎の病は時が経つと自然と姿を消した。まるで、神が栄えすぎた人類を間引いたように……暴れるだけ暴れた後は糸が切られたように死は止まった。  親も先生も近所の大学生もいなくなり、そのあとは同じ中学校に通う友達も半数以上がいなくなってしまったが僕はまだ生きていた。不幸中の幸いと言うにはあまりにも不幸が大きいが、小さな時からの親友も病に侵されることはなく生きていた。  幼い僕たちは死という選択をすることもできず、とりあえず生きることに決めた。大人が大量に残した食べ物をお金を払わずに持ち帰り、食欲が無くて喉を通らなくても無理して飲み込む。家族の死体を埋める気力も無くて、行く当てもなく街を歩いて、毎日違う場所で体を休めた。ホテルだったり、デパートだったり。 「――私たちと一緒に暮らさない?」  そんな毎日の中である日出会った女の子が僕たちにそう言った。  言葉に従った僕たちを女の子は大型の公民館へ案内した。そして、数少ない生き残りの子供達との共同生活が始まった……。
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