第1話 金色

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 世界から大人が消えた後に、残った他の子供達と共同生活を始めた。住む場所に選ばれたのが公民館。4階建ての大型なものでシャワールームやベッドルームも備わっており、かつては地域の住民の教育文化施設としてだけではなく、外部の教育団体の宿泊施設としても利用されていた。  町を二周ほど歩いて、暖まった体が心地よく感じられてくるとエイタは帰路につて公民館へ戻った。自動ドアを抜ければ真っ直ぐに階段へ向かって進む――。  建てられてからまだ3年ほどの公民館は外観も内装も新品同様、白と茶色でデザインされたエントランスは蛍光灯の光で外よりも明るく、床のタイルが鏡のように光を反射する。  受付だった場所の横にはどこから拾ってきたのか分からない天井に届きそうな高さのヤシの木みたいな観葉植物が目を引いていて、一階の奥にあるカフェスペースからは食器を片付ける音が1日の始まりを作り上げていた。  エイタは髪を揉みほぐすように触りながら階段を一歩一歩、一段ずつ上る。外から帰ってきたことだし、途中でトイレによって手を洗うことに決めると今度は一段飛ばしに切り替えた。  3階まで登ると廊下のほうから声が聞こえてきたのでエイタは足を止めた……。鼻水をすする音と一緒に聞こえてきたのは女の子がすすり泣く声だった。耳を澄ますと別の声も混じっていて廊下と階段の境界に立って覗くと、座り込んで泣く女の子と横で元気づけるように頭を撫でている女の子がいた。
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