第1話 金色

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「うわー!おいそのアイテム俺のだろ!」 「まだまでですねぇ」  暖房の効いた明るい部屋の中ではショウゴがタイシとゲームで白熱していた。2人とも一瞬こちらを確認してまた画面に集中する。 「くっそーまた負ける」  ショウゴが必死にコントローラーの上で指を動かしている。どうやらタイシが優勢らしい。 「エイちゃんおかえり」 「おう」  ショウゴの隣でコントローラーを握る少年は同い年のタイシ。住んでいた家がすぐ近くだったので幼稚園児の時からのエイタの親友だ。  2人は笑っていて、たしかにこの部屋に来るとエイタも楽しいことで頭を満たせる。一般家庭にはまずないであろうサイズのテレビに最新型のゲーム機とソフトが揃っていて家具も家電もマンガもすべてが不自由ない。エイタ、ショウゴ、タイシ、3人が公民館の一室を好きにカスタマイズした理想的な遊び部屋だ。  机の上にはショウゴが今日3人でやると決めたゲームソフトと、タイシが次に物品を調達するときにこの部屋に必要なものをまとめたメモが置いてあった。メモなんて取らずに手あたり次第持ってくれば良いと思うが、昔からの親友のこういうマメなところは度々感心させられる。  喉が渇いていたのでショウゴとタイシの後ろを通って冷蔵庫まで行くと――「俺にもなんか飲み物にくれ」と、ショウゴが前傾姿勢でコントローラーと一緒に体を動かしながら言ってきた。 「タイちゃんは何かいる?」 「俺も飲み物――ショウゴくんと同じのでいい」  エイタは冷蔵庫を開けると、残り少なくなっていたスポーツドリンクを見つけたのでラッパ飲みで飲み干した後、紙コップ3つにオレンジジュースを注いで机の上に持っていき、いつも自分の席である赤い座イスに座った。 「ショウゴくんきつそうですね」  エイタがそう言った瞬間に、ショウゴがいつも使うキャラが倒された。 「おいエイタのせいで負けたじゃん」 「いや俺のせいじゃないでしょ」  3人は屈託のない笑顔で顔を合わせて笑う。 「じゃあ、今日のメインイベントやるか。昨日の続き」  ショウゴがそう言って、机の上のゲームソフトの箱を開け、ゲーム機のほうへ向かうと「エイタ!」と呼ばれコントローラーが飛んできた。急だったのでエイタは体がのけぞり両手で受け取る。  タイシのほうを見ると、座イスの背もたれに体を預けてオレンジジュースを飲んでいたが、エイタがタイシを見ていることに気づいて目が合い、唇をすぼめると、子供の頃から全然変わらない童顔でやれやれといったようすで笑ってくれた――。
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