第1話 金色

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 気づけば13時が過ぎていてゲームが区切りの良いところまで終わった。3時間ほど座りっぱなしだったので背もたれから体を開放して背伸びをした。ショウゴは足を伸ばして座イスに深く座り、タイシは机に伏している。 「昼飯どうするー?」 「冷凍食品でいいんじゃないですか」  そのままのだらけた体制で2人が会話する。冷凍食品でも良かったがエイタは外に出たかった。電子レンジも最新機種のものがこの部屋にある。 「タイちゃん今日は班で何かないの?」 「今日は何もない」  この公民館で暮らす人間は班に分けれていてエイタとショウゴは同じ班だがタイシは違った。1班10人前後で7つある班には、曜日ごとに基本的な家事が義務として割り当てられている。  そういえば昨日、タイシが夕飯を作るときにいなかったのを思い出した。夕飯を作った次の日は必ずやるべき仕事はない。  立ち上がり冷凍庫の中を確認するフリをする。冷凍庫の中身はだいたい把握していていて、何度食べても飽きない自分の好物のたらこスパゲッティがあることも知っていた。 「俺はあんまり食べたいのないから下の共用の冷蔵庫漁ってくるわ」  2人がこちらを見ていないのは分かっていても、エイタはどうしても嘘をつくときは人のほうを見れない。 「んー」  ショウゴが口を閉じたまま返事をする。放っておいたら2人ともこのまま寝てしまいそうだ。  1人で歩く口実を作れたエイタは2人に刺激を与えないようにさっさと部屋の出口に向かった。開ける音が室内や廊下に響かないようにそっとドアを開ける。  その時だった。エイタが廊下へ出ると同時に階段の近くのドアが開く――。  彼女が廊下に出てきた……。  いつ見ても魅了される。金色のショートヘアに白い肌。エイタよりも一回りだけ小さい背丈に人形のような人という言葉のお手本といえる妖艶な容姿。  エイタの心を悩ませる金色の彼女が廊下に出てきた……。
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