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えーと、電話を置いてる棚の引き出し。上から一段目の左側。ここには印鑑、爪切り、はさみなどちょっとした小物が入っている。
「あれ……?」
見つからない。前使った時、ここから持ち出してここに戻したはずなんだけどな。ガサゴソと引き出しをあさっていると、右後方から学ランの袖が伸びてきた。
「これ」
細長い指がするりと銀色の刀の柄をつまみ、私の顔の前で振って見せる。
「……ありがと。あれ、金じゃなかったっけ?」
「刃こぼれしたから新しく買ったんだ」
振り向くと、不安げな顔をしている藍がいた。私は彼の指から銀の日本刀を抜き取って、「そう」とだけ返して自室に引き上げる。
扉を閉めると、プレートがカタリと鳴った。あいつ、何考えてるんだろう。
取り急ぎ机の上に置いたパステルブルーの封筒。安物の日本刀はピッと気持ち良く封を切り裂いた。
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