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文章は短く、誤解のしようがないほどシンプルだった。
『今年の春は、きっと綺麗な桜が咲くことでしょう』
横罫線に沿って綺麗なペン字が並ぶ。十五行以上ある便箋の真ん中、たった一行だけ使って書かれた無名のメッセージ。
「何これ」
何の変哲もない内容。今年の春は、きっと綺麗な桜が咲くことでしょう。改めて読んでもこのメッセージが私に何を伝えたいのか分からない。
月がきれいと言われるのは分かる。そしたらあなたのためなら死んでもいいと返せる。でもこの手紙の文に対する適切な答えは分からなかった。
「何がしたいんだろう。約束は果たされたのに」
何だか落ち着かない。手紙を机の上に置いてピンクの布団に寝転ぶ。くすんだ白い天井を睨む。
目に優しい照明を見つめ、"あの日"のことを思い出す。あの時の衝撃は鮮明な記憶として残っている。
百回目の告白の始まり。その日は快晴だった――。
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