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「――好きです。付き合ってください」
師走の寒空の下、数日で冬休みという浮足立った校舎の賑わいから避けるように、人気の無い体育倉庫裏で想いを伝える。
プリーツスカートを握り締める両手は震えていた。手汗をかいていた。もし手を差し出されたらどうしよう。でもそんな不安は杞憂に終わった。
「――ごめん。何度も言うようだけど、君とは付き合えない。ごめんね」
繰り返された定型文。私がこの場所でこの台詞を聞くのはちょうど百回目だった。百回目の失恋の今日を、私はきっと忘れないだろう。高校を卒業しても、大学を卒業しても、会社に入社しても、他の誰かと結婚しても、一生忘れられない思い出になる。
忘れたいほど辛い恋愛にはしたくなかった――。
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