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「随分と眠っていたんだね? 気分はどう?」
「それよりも貴方は誰? ここはどこ?」
「全く、何も、覚えていないんだね……」
男はやれやれと呆れた様子だった。
「ところで、貴方は誰なの? そんなカラスみたいな格好をして」
「カラス……って。まあ、外れていないか。僕の名前は夜鳥。君を押し付けられた底辺の異能力者さ」
訝しむ彩子に面倒くさそうに男、夜鳥は返したのだった。
「私は彩子よ。貴方、異能力者なんだ。異能力者って、あれでしょ? 日本に古くからいるっていう除霊や式神を操る人達」
異能力者とは古くから日本の政治を影で支えている者達の事である。
常人とは異なる特殊な力を持っており、占いや怨霊退治など幅広く活躍してこの国を守ってきたのであった。
「まあ、大体はそうかな。僕はちょっと違うけどね」
「違うって?」
「僕の異能力はモノに宿った付喪神達と会話が出来る『だけ』なんだ。だから、異能力者達のヒエラルキーの中では、ほぼ最下層にいる」
夜鳥は肩を竦めたのだった。
「ふ〜ん。でも、付喪神と会話が出来るだけでも凄いと思うわよ」
彩子の言葉に、夜鳥は虚をつかれたように目を丸くした。
けれども、すぐに先程までの気怠げな顔になったのだった。
「そりゃ世間知らずな君は、そう思うだろうね。そんな能天気な頭じゃね」
夜鳥の馬鹿にしたようなその態度に、彩子はカチンときたのだった。
「何よ! その態度は! 悪い? 世間知らずで!?」
彩子は語気を強めた。
「だって、前の持ち主が手放してから、ずっと眠っていたんだから! だって、私は……」
ここで彩子は自由にならない身体で、なんとか叫んだのだった。
「私は人形なんだから!!」
彩子は人形だった。見た目はフランス人形風だが、よくよく見ると日本人の顔立ちをしている人形だ。
厳密に言えば、「元・人間の人形」だ。
とある事がきっかけで人間だった彩子は、人形となって長い時を生きて、何度も変わる持ち主を見てきたのだった。
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