第1話 推しが友達ってアリですか?ー晴side

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大学から徒歩10分くらいの場所にあるオートロック付きのマンションを借り、高校卒業後すぐに一人暮らしを開始した。 初めての一人暮らし、初めての大学。 不安な気持ちと同時に未だジュエスタ解散を受け入れられない病んだ気持ちでどうしようもない俺。 「……隣の部屋の人に挨拶した方が良いか」 一番端の部屋になり、実質隣は一部屋だけ。 緊張するけど、挨拶しないのは失礼に当たるよな? 母に持たされたタオルの詰め合わせの入った紙袋を持ち、俺は緊張しながらも隣の部屋へ。 まだ、隣の部屋の人には会ってないな。 おばさんとかだったらいくらか気持ちが楽なんだけど。 「す、すみません。隣に引っ越してきた天沢ですけどー」 隣の部屋のインターホンを鳴らす。 「はーい」 ドアが開き、隣の部屋の住人が顔を出した瞬間だった。 「えっ……」 「わざわざどうも」 「た、た、たくみん!?」 俺の目の前に現れたのは芸能界を引退してしまった推し……神城匠だった。 何でたくみんが!? 「あれ……」 「あ、あの! これ、いらなかったら捨てちゃって良いんで! それでは!」 「あ、おい……」 俺はタオルをたくみんに押し付けると、すぐさま部屋に戻る。 「ま、ま、マジで? 何で俺の隣の部屋に推しが!? し、信じられん。夢じゃないか……」 寝室にはたくみんのポスターがたくさん貼られている。 ひ、久しぶりに会話したけどやっぱり近くで見たらポスターの百倍かっこいい。 けど、たくみんは今一般人なわけで。 愛を伝えるのは重いし、うざいよな。 なんか変な勘違いされかねない、恋愛感情あるのかとか。憧れなのに。 「だ、だめだ。か、関わらないようにしよ!」 我慢、気持ちを我慢だ、晴! 案外隣の部屋の住人ってそんなに頻繁に会わないもんだし! 実家もマンションだったけど……。 大丈夫、大丈夫! そう、思ってた。
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