第1話 推しが友達ってアリですか?ー晴side

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「か、神城くん……」 「匠で良いって」 「だ、だめです!」 「まだ敬語だし。別にもうスターでも何でもないんだからさ、気さくにしてくれよ」 スターでも何でも無い!? 「何言ってるんですか!? たくみんは芸能界を辞めたってずっと俺にとってはスターで! かっこいいよ! 簡単に友達になんてしちゃいけない、神的存在だから!」 「えっ……は、ハル?」 い、い、言ってしまったぁ! 気持ち悪いヲタク発言すぎるよ、俺! どうしよう、引いたよな? 女子からならまだしも同い年の男子でこんな発言するの俺くらいだろ。 「ご、ごめん! お、俺には深く関わらないで!」 「……お前、握手会の時の奴か!」 「えっ?」 「やたら懐かしい感じがあって。当時は男子のファンって珍しかったからさ、ずっと覚えてたんだよ! うわ、マジかぁ」 あれ? 気持ち悪がってない!! 「えっと……」 「そっか。今もファンで居てくれてたんだな」 あぁ、あの握手会の時の事忘れてなかったんだ。 たくみんはやっぱりあの握手会の時から変わらないんだ。 「へ、変じゃないかな」 「は? 何で? ユニットがでかくなってからは男のファンもついたし、普通だろ。まさかさっきからきょどってたのって俺に気を使って?」 「だ、だって……今、神城くんは一般人なわけだし、一緒にいたら俺は芸能界に戻ってって言いかねないから!」 「……悪い。ずっと応援してくれてたのに俺は悲しませてしまった。芸能界に戻るつもりは一切ない」 「そ、そんな! 謝らないで……」 本人の口からはっきり聞くと辛いけど、もう仕方ないよね。 「そっか、ハルがあの時の! 良かった、今は元気なんだな!」 「お、おかげさまで」 「嫌な事ばっかじゃないな、人生」 「えっ?」 「まさか俺を追ってマンションと大学決めたとか?」 「ち、違う! それは本当に偶然で! め、迷惑なら引っ越すから!」 「別に引っ越さなくても。そっか、偶然か。すげぇな」 すんなりたくみん推しのヲタクである俺を受け入れてくれた! 「神アイドル….…」 「アイドルでは無くなったけど、俺はハルの同級生。友達にはなれるな」 「えっと……」 「なるよな?」 すごい圧! 「は、はい……」 「決まりだな」 たくみんはにやりと笑った。 まさか推しが自分の人生初めての友達になるなんて思いもしなかった。
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