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俺のファンだったハルが隣の部屋に越してきた事には嬉しさと辛さを感じてしまう。
だけど、ファンの中で一番印象に残っていたのがハルだった。
最初はすぐ気づけなかったけど、小学生でまだアイドルとしての自信がそんなになかった俺にエールをくれた同い年の男の子のファン。
ハルが生きてまた俺の側に今いるのには何か意味がある気がする。
「大学終わったら学食で飯食って、眼科行ってサロン行って、服を買いに行くぞ」
「ほ、本当に行くの?」
「眼科とサロンは予約してあるし。お前はもっと自分を磨け」
隣でずっと自信無さそうにされてると気になるし。
「お、推しから説教されるなんて」
「金なら俺が出してやる」
「そ、それは申し訳ないよ!」
「お前さ、アイドル時代の俺にいくらぐらい貢献した?」
「えっと、何十万かは行ってるんじゃないかな」
「それに比べたら全然安い」
「いやいや!」
「今度は俺が……貢献してやりたいだけ」
ジュエスタのメンバーと上手く行かなくて辛い時も、ファンに俺は気持ちを救われてたから。
「匠くんは……アイドルを辞めても変わらないんだね」
「は?」
「いつだって人の事を考えてる。さすが、元リーダー」
「俺は……リーダーの資質なかったよ」
「えっ? そんなわけ!」
「思い切ってその黒髪切って、茶髪にしてみるか。マッシュカット良いかもな」
俺はハルの髪に触れながら、話をはぐらかす。
「ま、マッシュカット!?」
「ハルは髪無駄に長いし、スッキリした方が良いだろ」
「お、俺なんかがやってもださいんじゃ?」
「そんな事無い。俺のプロデュース力なめるなよ」
「えー!」
ハルにとって伝説のような存在のアイドルじゃなくて、友人になりたい。
俺のワガママでハルは戸惑ってるみたいだが。
「この紙に受けたい授業を書きまくるのか。だりぃな」
大学で講義の受講の仕方のガイダンスが始まると、やたら分厚いガイドと受講希望の書類を渡され、早速面倒くさくなる。
まだ1年でどんな講義を受けるべきか見当もつかない。
「せ、選択必修も種類多いね」
「全部ハルと同じで良いや」
「えっ!」
「一人だと女子が隣に座ってきたりしそうだし。女避け。俺を守れよ、ハル」
「俺とずっと一緒にいたら疲れない?」
「別に」
「そ、そう。じゃあ、匠くんの分も書いておくね」
「頼むわ」
なんか、一緒にいて居心地良いしな。
ハルはまだ緊張してるっぽいけど。
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