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「陽太様、その顔は……」
翌朝。すっきりした顔で会社に向かった飛凰とは正反対に、俺は血走った目で狼狽える景虎を見上げた。
「全然眠れなかった……ベッドに入った時は、確かに眠かったのに……。飛凰様が寝てるか確認してたら、急に目が冴えちゃって……」
「ああ、ピークを無駄に越してしまったんですね。それじゃあ朝まで何をされてたんですか?」
「………」
正直、何もしていない。ただじっと目をギンギンに見開いて朝が来るのを待っていただけだ。
ベッドを抜けて温かいものを飲みに行こうかとも思ったけれど、それで飛凰が起きてしまったら元も子もなくなる。だから身じろぎせず、息を殺し、飛凰の寝息を聞いていただけだ。
「……めちゃくちゃ最悪な時間じゃないですか。よく耐えられましたね」
「もっと褒めてくれ……。飛凰様には俺も朝まで寝たことにしてあるんだ……」
「お、お疲れ様です。陽太様……」
「分かる、景虎。目蓋は重くて仕方ないのに、頭の中が寝ることを許してくれないこの感じ……」
昨日の飛凰の気持ちを身をもって知った俺は、今夜も魚料理を頼みにふらふらと厨房へ向かったのだった。
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