第01 堕天使はやってしまいました。

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第01 堕天使はやってしまいました。

「手順は分かってますね?」 「はい、女神様」 「では、中井浩介と五十嵐真理の赤い糸を結んで来てください」 「行ってきます」 天使のユート・シャラーキは女神様のお手伝いを頑張っている。 下界へ降りてきた所で呟く。 「実際は面倒なんだよね・・・人間の恋なんて適当で良いと思うわ」 「さてさて、お互いが近くに居ると良いけどな・・・」 今日もテーブルに置いてある弁当箱を、カバンに入れ家を出て行く。 両親は小料理屋をやっているので、15時位から深夜3時位まで家に居ない。 休みの日曜日も疲れてるのだろう、殆ど寝てるので会う事がない。 夕食を偶に一緒する位だ、平日などは俺が自分で作って食べている。 「浩介おはよう」 「おはよう」 俺は中井浩介【なかいこうすけ】、声を掛けて来たのは親友で、鈴木健太【すずきけんた】。 中学の3年間一緒だった、家から近いと言う事で、2人同じ高校に入ったのだ。 健太はスポーツ万能で、中学から続きバスケ部に入っている。 ちなみに俺は、帰宅部一本だ。 「浩介、数学の宿題やって来たか?」 「うん、教室に着いたら見せてあげるよ」 「また疲れて寝ちゃったんでしょう?」 「アハハ、悪いな」 全然悪い気がしない、健太は部活を真剣に取り組んでいる、俺が出来る事で有れば何でもしてあげたい。 「浩介、健太おはよう」 「美由紀、おはよう」 「おはよう」 健太の彼女で、近藤美由紀【こんどうみゆき】入学して数週間で付き合い始めたらしい。 彼女はバスケ部の新米マネージャーだ、学年でも可愛い方だと思う。 今は5月、俺も彼女は欲しいと思っているが、インドアな16歳では無理だろうなと、諦めている。 大体俺の趣味は、アニメを見たり、ゲームをしたりするのが好きな人間だし、彼女なんて出来た事も無かった。 健太ともなぜ親友で居られるのか不思議である。 「健太、数学のノート」 「有難う、時間前までには返すからな」 「うん、お願い」 俺は教室に着いて直ぐに、宿題のノートを貸した。 席に着くと、窓から入ってくる風が気持ち良かった、俺の席は昼寝にもってこいの場所に有る。 一番後ろで、窓から2列目両隣が居ないのは楽で良い。 本当はくっついている窓側が良かったのだったが、左側は女子と決まっている所が残念である。 健太は俺の前である、元々入学式の日、各自勝手に座った席がそのまま決まっただけの事だ。 「浩介、ありがとう」 「気にしないで良いよ」 「健太は、また浩介から宿題見せて貰ったのね」 大抵の休み時間には、隣のクラスから美由紀がやってくる。 「帰ってさ、飯食って風呂はいると、眠くて耐えられないんだよねぇ」 「美由紀が見てて、一番分かってるんじゃないの?」 俺が言うと美由紀は 「そうね、健太は人一倍、練習も集中力も使って頑張ってるからね」 美由紀からいい匂いがして来る、シャンプーだろうかリンスだろうか。 休み時間、窓側の席は美由紀の指定席だ、風に乗ってやってくる香りが何気に好きだった。 4時間目、外に目を向けると、校門へ向かって歩いていく生徒が居る、早退だろうか。 「では、明日からよろしくね、五十嵐真理【いがらしまり】さん」 「宜しくお願いします」 真理はお辞儀をして職員室を出て行った。 引っ越して来たばかりの彼女、校門からはスマホを取り出し、ナビに従って家へ向かった。 途中の景色も楽しみながら家に帰って行ったのだった。 「ただいま~」 「おかえり~、荷物部屋に運び終わってるからね」 「ありがとう、何か手伝う事ある?」 「そうね、食器をしまって貰おうかしら」 「は~い」 「お母さん、仕事はどうするの?」 「片付いたら探さないとね」 「今度は昼間の仕事にして欲しいな」 「そうね、まずは昼間の仕事で良いのが有るか、探して見るわね」 「有難う」 真理は皿を数枚割った物の、終わらせて自分の新しい部屋へ向かった。 放課後、美由紀が健太を迎えにやって来た。 「2人は本当に仲良いよね」 2人は少し恥ずかしそうに嬉しがってる。 「浩介もB組の可愛い娘を、紹介してあげようか?」 「嫌、きっと不幸にしちゃうからさ」 俺は鞄を持ち立ち上がった、美由紀は綺麗で良いなぁ。 「また、明日な」 「気を付けてね」 「有難う、部活頑張ってね」 羨ましい限りだ。 俺は家の鍵を開け、中に入り誰も居ないのを知っていながら、只今と言う。 「あれ? 隣に誰か越して来たのか」 まぁ関わる事は無いし良いかと思い、2階の部屋へ上がって行く。 「うう、暑い」 思わず声に出し、部屋に有る2つの窓を開ける。 隣の家に面してる窓を開けると、綺麗な黒髪に、透き通るような肌をした娘が、一生懸命荷物の片付けをしてたのだが・・・ドジっ娘なのだろうか、ヌイグルミを飾っては落ちて来てを、何回も真面目に繰り返している。 思わず笑ってしまった。 彼女がヌイグルミを拾いこっちを見た。 「は、初めまして」 彼女は、恥ずかしそうにお辞儀をする。 「初めまして、中井浩介です」 「すいません、五十嵐真理です」 挨拶だけ済まして、俺は机へ彼女はヌイグルミとの格闘へ戻っていった。 天使ユート・シャラーキがやって来た、勿論人間には見えてない。 「いたいた、彼と彼女の糸を結べば良いのね」 「え~と、男性からだから、彼の赤い糸に、私が持ってる金の糸を結んで、彼女の赤い糸を結ぶと良いんだっけかな?」 ユート・シャーラキは呟きながら、作業をした。 「あ~、違うか彼の糸と彼女の糸を結んでから、私の金色の糸で結ぶんだっけかな?」 「あ~、面倒だなどうせ結果は同じだろうし良いか」 天使は彼の赤い糸と自分の金色い糸を結んだ。 彼の部屋の中、天使は羽を失い転げ落ちた。 「何故? 女神様?」 部屋の主が駆け寄ってくる。 「雪、大丈夫か?」 「う、うん」 やばいーーーーーーーーーーー! やってしまった、名前は確か中井浩介だっけ。 「ええと・・・お兄ちゃん?」 「頭の打ち所でも悪かったのか?」 「今更何を言っているんだ、確かに俺は兄だけど・・・俺達は似てないけど双子だろ」 浩介は不思議そうに言う、雪は窓へ行き隣の家を見る。 一生懸命とヌイグルミを飾ろうとしてる真理が居る、とりあえず生きてるのでほっとした。 もし手違いで人を殺したと成ったら、堕天使と成ってしまう所だった。 再び視線を上げると、真理が見ていた。 「初めまして、五十嵐真理です」 彼女は笑顔で挨拶した。 「初めまして、双子の中井雪です」 雪は引きつった笑顔で挨拶をした。 「似てないのですね」 「ええ、良く言われるんですよ、二卵性ですからね、アハハハ」 「そうでしたか、宜しくお願いします」 お辞儀をして、ヌイグルミと格闘の続きを始めた真理だった。 雪は浩介のベッドに座り込んだ。 「雪、どうした?」 「ん?」 「嫌、俺の部屋に来たんだから用事が有ったんだろ? 宿題か?」 「うんうん」 取り敢えず細かい事を把握する為額を合わせなければ行けない、それから浩介と真理をリア充にすれば、力が戻り帰れるはず。 「仕方が無いなぁ、双子とは言え可愛い妹の為だ」 浩介は勉強道具を持って、部屋を出て行った。 雪は浩介に付いて隣の部屋へ入って行く。 「一緒にやろう」 そう言い、笑った浩介の顔にキュンとしてしまった雪だった。 あ~ 何だろう彼を見てると胸がトキメイてくる。 天使が人間に惚れるなんてあり得ない! 見た目だってごく普通なのに・・・ これって、極限のトラブルに追い込まれたせいね、きっとそうだわ。 「どうした雪? 顔が赤いけど熱でも有るんじゃないか?」 浩介は雪の前髪を上げ、額をくっつけて来た。 この世界の色々な情報が流れ込んでくる、運良く簡単に第一段階はクリアした。 何、この子ボッチだったんだ、片思いの相手が親友の彼女とは最悪な人生だ、早くリア充にして上げなきゃね。 私の名前は雪ね・・・覚えたわ。 面倒な事に成っちゃったなぁ・・・ 「大丈夫そうだね・・・何だか違和感は感じたけど」 「有難う、早く宿題をやろう」 雪は悟られるのを恐れ、話しを進めた。
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