第02 雪は誰だ

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第02 雪は誰だ

俺は夕食を先に終わらせた。 「ごちそうさま」 直ぐに食器を洗い始める。 「雪、食べ終わったら先にお風呂入って良いからね」 「兄さん、有難う」 俺はTVゲームで遊びながら違和感を感じていた。 「兄さん、お風呂あがったよ」 扉の向こうから雪の声が聞こえて来た。 「は~い」 セーブをして風呂へ向う。 「ハァ~ 気持いいなぁ」 何だろう、今日は何時もより時間が足りない感じがする、出たらもう寝る時間だ。 何時もは風呂出たら、アニメ見て寝てたんだけど、宿題に手間取ったかな。 自己完結して、目をつぶり寛いだ。 風呂から上がると雪が居間でテレビを見ていた。 「雪、まだ寝ないの?」 「うん、これ見終わったら寝るよ」 「俺は先に寝るからね、おやすみ」 「おやすみー」 雪はテレビに集中なんてしてなかった、頭の中ではどうやって2人を、リア充にするか悩み込んでいたのだ。 まずは、自分にどれだけの力が残ってるかだ、それによって難易度は変わって来る。 金の糸は出ない、羽根も出ない、女神様とも連絡出来ない。 今の所分かっているのは、人間の思考を読み取れる事だけだ。 テレビを消して、2階へ上がり部屋へ入る。 朝俺は下へ降り、顔を荒い手際良く朝食を作り始めた。 準備が出来たら、部屋で身支度を整え雪を起こしに行く。 「ゆき~ 起きてるか」 「雪入るよ?」 可愛い寝顔だ、朝から元気が湧いてくる。 俺は雪の部屋へ入り、ベッドに潜ってる雪を揺り起こす。 「雪、遅刻するよ」 「う~ん、もう朝?」 「おはよう、夜更しでもしたの?」 「少し考え事してて」 「悩みならちゃんと言ってね、早く支度してご飯食べよ」 「うん、すぐ行く」 優しいなぁ、人間ってこんなに優しい者だったけか? 私は考えながら支度をして下に降りて行った。 顔を洗い席に着く。 『頂きます』 「美味しい」 「有難う」 雪は可愛い、癖っ毛で肩にかからない位の長さでリボンを付けてる。 綺麗な二重で、スッと通った鼻筋に、小さめな口、まるで天使のような感じだ。 いかんいかん、俺は何を考えているんだろう、これではシスコンだ。 「ごちそうさま」 俺は食器を洗い始める。 「兄さん、ごちそうさま」 雪が食器を持って来る。 「雪、悪いんだけど俺の鞄も持って来てくれるかな?」 「は~い」 洗い物を終えると、階段に座って待ってる雪が、鞄を渡してくれる。 「有難う、行こうか」 朝は親が寝てるので、静かに行動して出て行く。 「浩介、雪、おはよう」 「お早う」 「お早う、健太」 「雪は今日も可愛いなぁ」 「ふふふ、有難う」 「健太、雪は駄目だぞ」 「浩介はシスコンだよなぁ」 う~ん、俺ってシスコンか? 「3人共、おはよう」 挨拶をして美由紀が加わる。 「今日も宿題して無いんだよね」 「良いよ、見せて上げる」 「浩介、何時も有難うな」 4人で教室に入ると、俺は直ぐ健太にノートを貸す。 「雪、後ろの襟がおかしいよ」 健太の横に座る雪へ、声を掛ける。 「有難う、兄さん」 チャイムが鳴り、ホームルームが始まる。 「今日は転校生が居ます」 見覚えのある娘が入って来る、扉のレールに躓きそうに成って慌てている、思い出した! 「五十嵐真理です、千葉から越して来ました、宜しくお願いします」 「はい、五十嵐さんは一番後ろの空いてる席を使ってね」 「はい」 「渡辺君、よろしくお願いね」 「は~い」 真理が近づいてくる、雪に頭を下げ、俺に頭を下げ、通路を挟んだ右隣りに座った。 男子が渡辺学【わたなべまなぶ】を羨ましそうに見ている。 隣の美由紀も俺の耳元で、綺麗な娘ねと言う。 俺としては、美由紀の方が断然綺麗で好きだなと思っていた。 1時間目は苦手な英語だ、聞いてるだけで眠く成って来る。 「浩介、浩介」 誰かが耳元で囁いている、俺の好きな匂いだ。 「う~ん」 「浩介、授業中だよ」 「美由紀、有難う」 あれ? 何で授業中に、此の良い匂いがするんだ? やっぱり何かが可怪しい、良く分から無いけど何かが可怪しい! 「美由紀、何か変じゃない?」 「何が?」 「う~ん、何か分から無いんだけど、変なんだよね」 「それじゃ、分から無いよ」 「そうだよね」 俺は苦笑いをした、右隣を見ると机の下に潜って消しゴムを拾ってる、クマさんパンツの真理が目に入った。 面白い娘だけど無しだなとモテナイ癖に俺は思ったのだった。 授業に戻ろうと前を向いた時、真理の所からゴンと言う音がしたけど、予想出来たので見る事は無かった。 「美由紀って、バスケ部だったよね?」 「何言ってるの帰宅部よ? バスケ部は健太じゃない」 う~ん、昨夜変な夢でも見たのかなぁ。 「美由紀って健太と付き合ってる?」 「健太が好きなのは雪よ」 うううう~ん 取り敢えず雪はどう思ってるのか帰ったら聞いてみないとな。 俯いて考え込んでる俺の視界に、消しゴムが転がって来た。 無意識に屈んで手を伸ばした。 ゴツン! 「痛い」 「痛っ」 「ごめんなさい、ごめんなさい」 真理が必死で謝ってる。 「アハハ、大丈夫だよ」 俺は小さく手を振ったと、同時に全てを思い出した! 俺は一人っ子なはず・・・一体雪は何者なんだ? 美由紀が自分のノートをこっちに渡す。 『今度の日曜日、また2人で遊びに行こう』 『良いよ』 また!と言うのが気になったので、出かける事にした。 その頃雪は、バレないかどうかヒヤヒヤしながら、後ろの会話に集中していた。 なぜなら、浩介からもらった記憶と違う部分が多々有るからだった。 「雪、今日変じゃない?」 「健太が聞いてくる」 「そうかな~、そんな事無いよ」 右後ろでやたらゴンと音がするのも、気になってしょうが無かったのである。 不思議な学校生活が終わった、皆と別れ俺と雪は家に帰った。 「雪、着替えたらちょっと部屋に来て」 「は~い」 「兄さん、お待たせ」 15分位して雪がやって来た、私服が可愛すぎる! イヤイヤ萌えてる場合じゃない。 「好きな所に座って良いよ」 雪はベッドに腰掛けた。 「雪は俺の兄妹じゃないよね?」 「え? 兄さん何言ってるの?」 「何かそんな感じがするんだよなぁ」 「兄さん、昨日から変だよ?」 「う~ん、俺のスマホの番号知ってる?」 「知ってるよ、今かけてあげるね」 俺のスマホが鳴った。 「ホラ」 俺は雪の名前が入っていない、電話番号からの画面を見せた。 雪は明らかに動揺してる。 実際は雪の番号が入っていたのだが、俺は消して賭けに出たのだった。 「可怪しいと思わない? 本当は誰なの?」 「そんなはず無い、分かるはずがない・・・」 「あ!」 「ハァ」 俺はため息を付いて言った。 「異世界とかは行きたくないぞ、基本インドア派なんだから」 「異世界? あるには有るけど違うわ」 どうやら諦めて全てを認めるようだ。
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