第05 楽しい水族館

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第05 楽しい水族館

日曜日、2人で朝食を済ませ、早めに家を出た。 雪が真理の家のインターホンを鳴らすと、真理の母親が出る。 「真理なら朝6時位に出かけて行っちゃったわよ」 真理は何時間待つもりなんだ! 仕方が無く、2人で駅へ向う事にした。 「雪よ確認し時たいんだが、真理はなぜ6時に家を出たと思う?」 「兄さん、きっと2時間前行動を心掛けているんだと思うわ」 「俺の可愛い妹は、そんな娘と俺を結ばせようと思ってるのか?」 「気の毒だと思うけど、私は本気よ」 雪は俺の質問に笑顔で答える。 「今、真理をダメな娘認定しただろ」 「いえ、してないわ」 問答してる内に駅へ着いた、まだ誰も居なかった、真理以外は・・・。 「真理、お待たせ」 「真理、おはよう~」 「お早う御座います、私も今来た所なんですよ」 痛い、痛すぎる、ちょっと考えれば、朝迎えに来る事を考えられると思うのだが。 「そうなんだ、良かったわ」 さすがの雪も引きつった笑顔をしていた。 9時近くになると、皆集まって来た、俺は健太を皆から離れた所に連れて行った。 「健太、ちょっと良いか?」 「何だ?」 「実は、今日1日雪の面倒をお願いしたい!」 「まじで? まじで良いのか?」 大喜びで興奮する健太・・・親友には悪いが、俺にとっては一世一代の大切な日だ、使えるものは何でも使って、邪魔を排除しなくては成らない。 「ただ真理も雪に懐いているので、一緒にお願いしたい何とか隙を見て、距離を縮める努力をしてくれ」 「分かった、頑張るよ兄さん」 「兄さんって呼ぶな!」 順調だ、此処までは順調だ、雪はどう動いてくるかだな。 「時間だよ、出発しよー」 5人は駅の構内へ向かって歩き始めた。 モノレールの中、健太は雪の側に真理は健太の側に、俺と美由紀は少し離れた所で会話をしていた。 「私ね、今日凄く楽しみに来たからね」 「俺もだよ、2人だけの時間が有ると良いね、渡したいプレゼントも有るんだ」 俺と美由紀は自然と手を繋いでいた。 チッ、浩介は何を手なんか繋いでるのよ、何か方法を考えないと行けないわね。 新しく分かった事は、真理の糸は繋がって無い。 私は自分でも気がついて無かった、任務だけではなく嫉妬も混じって「チッ」と言った事に。 八景島に着いた、日曜日だけあって結構なお客さんの数だ。 遊園地と水族館が有る所なのだが、まず先に遊園地で遊ぼうと言う事に成った。 俺の勝負は水族館! 遊園地では皆と心から楽しく遊ぶ事にしよう。 「行こう、美由紀」 「うん」 5人は遊園地へ向かった。 日曜日、朝の5時に真理は5人分の弁当を完成させた。 「4時間も掛かっちゃったか・・・」 それから30分以上かけて、乱れきった台所を片付け、6時に家を出て行った。 昼に遊園地のエリアから出て、全員で芝生に座り込んだ。 そこで真理がリュックから、大量の弁当箱を取り出した。 半信半疑で口にしてみると、これが驚く程に美味しい、あれもこれもが美味しい。 「真理美味しいよ」 「本当に、美味しいわ」 「有難うね」 真理は褒められ慣れてないのか、恥ずかしそうにしながら、でも笑顔で喜んでいた。 「私、手際とか悪いから、朝早くから作ったんですけど、頑張ったかいが合って良かったです」 「前の学校では友達も居なかったし、皆さんに感謝してるので喜んで欲しかったんです」 それで、早く家を出たのか楽しみにしていたんだろうな。 無邪気に素の笑顔を見せる真理を、初めて可愛いと思った・・・しかし俺は美由紀だけだ! 昼食も終わり水族館に行く時が来た。 「2時間自由行動にしましょうか」 美由紀が提案すると、全員了解して中に入って行った、美由紀もやる気満々な様だ。 「さぁ、美由紀行こう」 俺達のリア充生活の始まりだ。 「うん」 俺の差し出した手を取り横に並んで歩き始めた。 楽しそうに小窓を覗いたり、指を当てて遊んだりしながら楽しんでる、リア充経験の無い俺は、何処で告白をするか悩み込んで集中出来ない。 「浩介、あそこで休みましょう」 「そうだね」 ここか、ここで言えば良いんだな。 「美由紀」 美由紀が俯いて、顔を赤くしてる。 「なぁに?」 「もし俺と付き合ってくれるなら、このプレゼントを貰ってくれないか?」 「勿論よ、有難う」 優しく言って受け取ってくれた、それと同時に俺のリア充生活の始まりだ。 これ程嬉しい事は人生で初である。 「兄さん、御目出度う御座います」 「うぁ!」 なぜ、ここに雪が? 「雪、有難うね」 俺の代わりに、美由紀が答えた。 「美由紀、お揃いのネックレスなんだ、あそこにトイレ有るから付けて来て見せてよ」 「うん、待っててね」 美由紀が笑顔で走って行くのを見送り、雪の方へ振り返り事情を問い正す。 「雪、何時から居たのかな?」 「入り口入って、健太が真理の手を取って行ってしまってからよ」 健太のやつ、チョロすぎるだろ。 「そ、そうか残念だったな」 「そうですね」 落ち込んでる、可愛い妹が落ち込んでる、でも仕方がないんだ。 「雪にも良い恋愛が来ると良いね」 「その前に、目に見えるリア充をぶっ壊さなければ、いけませんけどね」 怖すぎるーーーーーー。 笑顔の美由紀が戻って来た。 「とても良いわ、有難うね」 「喜んで貰えて良かったよ」 「さぁ、3人で仲良く周りましょう」 「有難う、美由紀」 美由紀が雪の手を引っ張り、女子会トークをしながら見学を再開した、今度は俺がオマケに成ってる。 途中で健太と真理に出会い、合流した。 「ごめん、俺は健太と此処で休んでるよ」 そう言って、健太をベンチに座らせた。 「健太、何をやってるんだ」 「ああ、悪い真理に惚れちまった」 「マジか」 「真理って良く見ると可愛いんだよな、それで思わず告白した」 「急展開だなぁ」 これも想定内だ、まぁ良い結果だろう。 「おめでとう」 「嫌、振られたよ」 「えええええ?」 斜め上行く展開だぞ。 「真理が好きなのはお前らしい、本当は俺にお前の事を、色々聞きたいんだって言われた」 まずい、まずい、まずい、これを雪が知ったら。 「残念だね健太、私が付き合うまでは行かないでも、仲良くして上げるからね」 「雪・・・有難う」 健太の満面な笑顔、後ろを向くと雪の満面な笑顔があった。 雪のターゲットが俺だけに成るって事か。 何か対策を取らねば、愛しい美由紀との仲が危うく成る! 「ここの水族館面白かったわ」 「そうですね、私はこんなに多くの友達と、出掛けられるだけで楽しいです」 「これからも、皆で仲良く一緒に遊びに行こうね」 雪が明るく言った、俺はそれに悪意を感じたのだった。
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