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第06 駄娘乱入
「雪~ 夕食出来たよ」
「は~い」
『頂きます』
俺と雪は今日も2人で夕食を共にする。
「雪、これからどうするんだい?」
「破局させる」
「凄い物騒な事を、サラッと言ったよね」
「言ってませんよ」
ハァ、幸せなリア充生活を送れるんだろうか・・・
まさか、クマさん、うさぎさんが俺に惚れてるなんて。
「ごちそうさま」
俺は憂鬱ながらも食器を洗い始める。
「兄さん、お風呂に入るね」
「はーい」
困ったわ、成り行きに任せてたらリア充を成功させてしまった。
絆が深まる前に壊さないと面倒ね。
そうだ! まずは私に惚れさせて、美由紀から別れさせれば良いんだわ。
後は真理の背中を押して解決ね。
大体がリア充経験の無い浩介に、美由紀は結構ハードル高いと思うわ。
ふふふ、完璧!!
お風呂から上がると浩介がテレビを見ていた。
「兄さん」
「は~い 直ぐ入るよ」
「違うの、私の髪を乾かしてくれない?」
「え?」
「私の部屋へ来て」
そう言いながら私は階段を上った。
「俺に出来るのかな・・・」
などと言いながら付いてくる。
「はい、ドライヤーとブラシ、最初は優しく全体を手で乾かして行ってね」
「うん、分かった」
浩介がドライヤーのスイッチを入れ、私の髪に手を触れて来た。
気持ち良い、人に髪を乾かして貰うのって、こんなに気持ち良い物だったんだ。
「大体乾いたよ」
「今度はブラシで、優しく整えて行って」
「よし、やってみるよ」
あ~ 気持ち良すぎ。
「無事に乾いた様だな」
「兄さん、有難う」
「このくらいの事なら、何時でもやって上げるよ」
そう言って浩介は、私の頭を撫でて出て行った。
何時も優しいな・・・
「はっ! 私が癒やされてどうするのよ、天使が人間に癒やされるなんて、ダメダメ」
ハッキリ言って、あの優しさは超危険な武器ね。
う~ん、今日は格別に良い湯だな。
遂にリア充生活の始まりだ、それも好きな美由紀相手とは嬉しい限りだな。
全て雪のお陰だし、出来るだけ優しくしてあげないと行けないな。
「健太の話は、聞かなかった事にしておこう」
雪さえ押さえとけば、真理から来る事も無いだろう、可愛そうなボッチだった様だしな。
行ける気がしてきた!
ふふふ完璧!!
「兄さん、お早う御座います」
「お早う、今日は早いんだね」
目覚めと同時に雪の笑顔、反則級の展開だな。
「兄さん、早く起きないと間に合いませんよ」
「ああ、今起きるから」
俺が起きるのを確認して、雪は部屋へ戻って行った。
今日も1日が始まる。
まずは、美味しい朝食を作るか。
俺は休み時間健太と話しをした。
「健太、応援してやるから頑張れよ、俺には美由紀が居るんだし付き合えない」
「そうだな、1回振られた位で凹んだら駄目だな」
「そうだぞ、頑張れよ」
「浩介、有難うな」
嫌、そんなに熱く礼を言われると罪悪感湧いてくるから・・・
美由紀との学校生活は楽しい、今までが嘘のように周りの生徒も穏やかな目で見れる。
授業中に真っ白な見開きのノートが、書く所を無くなるまで、趣味や家での過ごし方などで、一杯に埋まって行く。
今日も楽しい学園生活の1日が終わった。
美由紀や健太と別れ、家へ向う3人。
俺と雪は真理に別れを告げ、自分の家へ入って行く。
雪はそのまま2階へ上がって行ったが、俺は食卓に置いてある手紙に気が付き、手に取り読む。
『浩介、雪、今夜からお隣の五十嵐さんが、お店を手伝ってくれる事に成ったので、娘さんの夕食もお願いするわね 母より』
家の店はそんなに繁盛してるのだろうか・・・嫌、考える所はそこじゃない!
俺は2階へ駆け上がり、雪の名を呼びながら扉を開けた。
「きゃっ」
「あ! ごめん」
「声くらい掛けてから開けてよね」
「ごめん、外で待ってる」
水色か、可愛かったな。
「どうぞ」
「雪、悪かったね」
「もう良いわ、それで?」
「実は手紙が置いてあってな」
雪は不機嫌な顔をする。
「違う、可愛い妹の下着姿見てどう思ったの?」
「う~ん 超可愛かった、雪以上の娘は居ないと思うよ後、ご馳走様でした」
「エッチ」
そう言った雪の顔は、赤く恥ずかしそうでは有ったが、笑みが溢れていた。
はぁ、俺は今家でも学校でも充実してるな。
「兄さん、用事が有ったんじゃないの?」
そうだ! この生活を脅かすかもしれない物。
「実は食卓に、この手紙が置いてあって、これは雪の仕業?」
俺は雪に手紙を見せた。
「知らないわよ」
「本当に?」
「本当に」
嘘は言ってなさそうだ。
「雪、俺はこれを何とか早い段階で中止にしたいと思う」
「それは可哀想じゃない?」
「可哀想じゃなくて、都合が良いじゃない?」
雪が目を逸らす。
「協力してくれるよね?」
「私の立場知っててお願いしてる?」
「もちろん」
「協力どころか、一緒に住んで欲しい位だわ」
「そっか、雪の立場も考えて上げないと行けないか」
「兄さん」
「雪の夕飯から半分、真理に上げるね」
俺は雪に背を向けた。
「待って!」
「ん?」
「前向きに検討します、様子を見ないと分からないので、少し時間を下さい」
「やっぱり雪は良い娘だね、有難う」
俺は着替えに、自分の部屋へ戻った。
今まで、この手の約束をして守られた事が無い、今回も何かして来るかもしれないな。
完全に信用しては駄目だ、堕天使と天然駄娘、俺のリア充生活を脅かす者達、怖い、怖い。
俺は着替えを済ませると、階段を降りて行った。
リビングを見ると黒髪にストレートの娘がいる・・・部屋へ戻ろ。
「兄さん、一緒にお茶を飲みましょう」
あいつーーーーーー!
しかし、断るのも不自然だしな。
「は~い」
俺は雪の隣に腰掛けた、なぜか真理がお茶を入れてくれる。
「真理、随分と早いんだね」
真理は恥ずかしそうに、モジモジしながら言った。
「ご馳走になるだけでは申し訳ないので、お手伝いをしようと思って来ました」
俺は雪の耳元で囁いた。
「食事作ってるの、俺だった言った?」
「ええ」
「どうかしましたか?」
真理が聞いてくる。
「何でも無いよ、食事は全部俺が作るから、真理は雪と一緒に待っててね」
少し寂しそうに、頷きながら真理は答えた。
「分かりました」
しょうが無いんだ、どうしても想像すると、3倍は手間の掛かる労働に成ってしまうんだ。
それからは、3人で夕方のアニメを見ていた。
「ねぇねぇ、真理って学校に慣れて来たでしょ、そろそろ好きな人とか出来たんじゃない?」
雪ーーーーーーー!
「い、いないよ」
チラッと俺を見ながら言う、真理よお前はすでに、健太へ話してしまった事を忘れてるのか?
俺は再び雪の耳元で囁いた。
「これ以上、悪意のある言動をしたら、朝食と夕食は3日間置きにするからな」
雪の顔がこわばって行く。
「分かったかな?」
「うんうん」
「浩介と雪って仲が良いよね」
真理が突然と言い出したので、俺は咄嗟に嘘を考えた。
「親があの通りですれ違いだから、俺が雪を寂しい思いさせたく無くてね」
「私は、一人っ子だから羨ましいな」
彼女の瞳は寂しそうに、そして羨ましそうな気持ちを訴える様に見ていた。
「真理は困った事が有ったら、俺に嫌、雪に相談すると良いよ」
危なかった、つい自分から重い荷物を背負ってしまう所だった。
「何でも相談に乗るから遠慮なく言ってね」
どうせ恋の悩み以外は、真剣に聞かないんだろうと思う。
「有難う」
真理はなぜか俺に向かって、微笑んでいた。
「そろそろ夕飯を作ってくるね」
食材がしっかりと増えている、親が決めた事ならしょうが無いか。
俺は手際よく、3人前の夕食を作り、食卓へ並べて行く。
「できたよ~」
『頂きます』
「美味しいです」
真理が即、褒めてくれる。
「有難う」
「真理も料理上手なのに、お母さんはなぜ、こっちで食べる様に行ったの?」
「私が夕食を作ると、2時間位掛かってしまうので、面倒になり納豆と卵が有れば、良い生活になってしまうんですよ」
「なるほど」
さっき俺が、3倍掛かる想像をした時の光景が蘇って来た。
「真理、兄さんの料理はどれも美味しいからラッキーね」
そう言って雪は、真理に少し得意げに微笑んでいた。
可愛い、今日いちで可愛いよ雪。
「ご馳走様でした」
「食べ終わったら、食器はそのままで良いからね」
消しゴムならまだしも、割れた皿が転がってきたら困る。
「はい」
俺は食器を洗い始めた、空いた食器を洗っていき全て終わらせた。
「真理、少し遊んで行く?」
雪が見計らった様なタイミングで声を掛ける・・・こいつは!!
「有難う、でも宿題やお風呂があるから帰るね」
「そう、残念だわ」
「それじゃ、ご馳走様でした」
笑顔で出て行き、鍵を閉めて帰って行った。
んんんんんんんん? 合鍵持ってるのかよ!!
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