0人が本棚に入れています
本棚に追加
第08 堕天使の罠
雪は浩介の部屋から嬉しそうに出て来た。
「ふふふ、これでリア充は爆発するわ」
明日を楽しみにベッドへ入り眠る雪だった。
その日の逆上る事、放課後学校も終わり、3人は家に着いた。
「それじゃ、後でね」
「うん」
「後でね」
真理と別れると、雪が鍵を開けて先に入って行く。
「雪、アイスコーヒー飲む?」
「のむ~」
俺は部屋で着替え、台所でアイスコーヒーを2杯作って、リビングへ向かった。
今日は宿題が無いので、のんびり出来そうだ。
「兄さん、有り難う」
おおぅ、今日も一段と素晴らしい私服だ可愛いよ雪。
「お邪魔しま~す」
真理・・・随分早いな?
「いらっしゃい、真理」
「いらっしゃい、その多い荷物は何?」
俺は思わず聞いてしまった。
「お風呂セットと着替え」
嬉しそうに答える真理。
んんん? 普通そんな簡単に人の家で風呂に入る物なのか?
「楽しみだね真理」
そういう事か、俺は勝手に解釈しながらアイスコーヒーを飲む、真理と目が合う。
「真理も飲む?」
「うんうん」
俺は台所でアイスコーヒーを作りながら思った、天然は怖い。
「お待たせ」
「頂きます」
無邪気な笑顔だ、誰かこの娘を彼女にして上げてくれないだろうか?
決して悪い娘では無いと思う。
「雪と真理は相性が良い様だね」
「はい、兄さん」
「そうね、雪と居る時って楽しいわ」
似たもの通し合うのか、堕天使と堕娘、俺に害が無ければそれで良い。
「2人でお風呂入るなら、少し早めにご飯作るね」
「は~い」
「はい」
この関係を何とかしないとな、俺のリア充人生に崩壊する恐れが有る。
健太は動く気が無いし、雪は甘えつつも隙を狙って来るし、真理に関してはまったく分からん。
「出来たよ~」
『頂きます』
「兄さん、今度の日曜日は3人で遊びに行かない?」
「ごめんね、日曜日は美由紀とデートするんだ」
「そう、残念ね」
しまった、もっと包んで断った方が良かったか?
「残念ね」
真理までも落ち込んでいる。
「2人共、ごめんね」
あ~ めんどうだなぁ
「ご馳走様でした」
俺は毎日の如く食器を洗い始める、空いた皿からどんどん洗って行く。
「兄さん、真理と先にお風呂入るね」
「は~い いってらっしゃい」
俺は洗い物を終わらせ部屋に戻った。
1時間ほどすると、雪から声が掛かった。
「兄さん、お待たせお風呂空いたわよ」
「直ぐ入る~」
着替えを持って、脱衣所の扉を開けた。開けた。開けた。
ああああああああああああ!
何でカゴにパンダさんが居るんだぁ?
悪意だ、悪意しか感じれない、真理は天然では無く優秀な策士なのか?
ハァハァ、まずは落ち着こう、部屋にも風呂にも真理は居ないようだ。
「ゆき~」
「な~に」
「ちょっと下に来てくれるかな」
「兄さん、どうしたの?」
「パンダさんが忘れられてるんだ、明日真理に返して上げてくれないかな?」
「あら、真理って意外と天然なのかもね」
ちがーーーーーーーーーーーう!
「よろしくね」
「は~い」
雪は、わざわざパンダさんを広げながら2階へ戻っていった。
ふぅ、疲れる・・・
そして翌朝、真理はまだ支度が出来て無いという事で、俺と雪の2人で学校へ向かった。
「おはよう、美由紀」
「おはよう、この前のネックレスのお返しじゃ無いんだけどさ、これ貰ってくれるかな?」
美由紀は照れながらも可愛い、熊さんのストラップをくれた。
そして自分のスマホを見せながら言った。
「お揃いだよ」
可愛い、俺の彼女さん最高!熊さん最高!
「有難う、早速付けさせてもらうね」
「うん」
丁度、真理がやってきた。
「皆、おはよう」
「真理、今日は寝坊したの?」
「違うのよ雪、実は・・・がなかったの?」
「良く聞こえなかったわ」
「パンダさんのパンツが無かったのよ」
ああ、昨夜忘れて行った、パンダさんか。
「それなら、家に忘れて行ってたから、持って来てるわ」
「有り難う」
雪が振り向かずに俺を指差してる。
・・・まさか雪よ・・・嘘だよな?
真理が俺の方へ歩いて来る。
「浩介、ごめんね」
美由紀が無言で様子を伺ってる。
「兄さん、返してあげたら?」
おい、言い方が可怪しいだろう!
恐る恐る鞄を開けると、居る、それも畳まれてないパンダさんが、普通は女子って小さく畳む物じゃ無いのか?
俺は真理に鞄の中を見せた。
「有り難う、お気に入りだったから、道にでも落としたら嫌だなって、思ってたんだ」
真理、自分のパンツをそこまで堂々と、広げて見せるやつは居ないと思うぞ。
「こ・う・す・け」
ひぃ、忘れてた。
「美由紀、実はね、これには訳が有ってさ」
「馬鹿、浮気者」
美由紀様は窓の方へ向いてしまった、視線の隅に小さくガッツポーズをする雪が入っていた。
あの堕天使めーーーー
俺は、1日掛けて何ページも使って何とか誤解を解いた。
「事情は分かったわ、雪のイタズラだったのね」
「そうなんだよ、度が過ぎるよね」
「そうね、雪も余り浩介を虐めないでよ」
「は~い」
「それじゃね、美由紀」
「バイバイ浩介」
俺達3人は家へ向かった。
「真理、確認しときたいんだが、パンダさんはわざと忘れて行った?」
「ううん、朝洗濯に出そうと思って見たら無いから、探して遅れちゃった位だもん」
「そう」
「雪、パンダさんをわざと俺の鞄に入れたよね?」
「ううん、兄さんの鞄と私の鞄を間違えちゃったのよ」
「それは無理が有るだろう、お仕置きだな分かってるよね」
「いやーーーーーー」
「駄目、結構凹んだので、2日の刑です」
「そんなぁ、可愛い妹に酷すぎるわ」
「浩介、何が2日か分からないけど可哀想よ」
くぅ~~~ 本当は真理、お前も刑にしたい所なのに!
「雪、一緒に謝ろう」
「有り難う、真理」
こいつら!
『ごめんなさい』
「もうやらないって約束だよ」
「はい、兄さん」
雪が俺の腕にしがみついて来る。
癒やされて行くのは何故なんだろう、不思議だよな。
それはそうだ、浩介は雪と、糸が繋がってるのを知らないでいるからだ。
「夕食作るか」
俺は3分で作り上げた。
「出来たよ~」
「兄さん、早っ」
「はい」
「納豆と卵?」
「そうだよ」
俺は微笑みながら言った。
「要らないなら座らなくても良いよ、一生作らないから!」
「そんな事無いわ、兄さんも毎日大変だもんね、偶にはこう言うのも良いと思うわ」
『頂きます』
何とかしないと、私は浩介に胃袋を人質に取られてたら上手く立ち回れない。
最初のコメントを投稿しよう!