黒の蝶

烏

疑問に思う私は、部屋を見渡して自分の私物が何１つもない事に気づいた。

私は、どうやって生きてきたのだろう……？

誰かを庇ったと聞いてはいるが、本当に私は誰かを庇ったのだろうか……？

いくら考えても分からない。

何１つ思い出せない入院生活の中で、唯一分かったのは、弱り切っていた筋肉が人より早く回復した事。

「何か運動してた？それとも身体を鍛えていたとか？」

リハビリ科の香山に問い掛けられた言葉に『さぁ？』とだけ答えた私。